
「自分のやりたいことって何だろう」「やりたいこともないのに、何のために勉強するのか分からない」。そんな悩みを一度は持ったことがあるのではないでしょうか。
私自身も、やりたいことをはっきり言葉にできず、モヤモヤしていた時期がありました。その状態から抜け出すきっかけになったのが、やりたいことを文章に書き出す「アウトプット」でした。
本記事では、やりたいことが見つからない理由と、アウトプットを使ってやりたいことを見つける3つのステップを紹介します。さらに、アウトプットがなぜ効果的なのか、興味の幅を広げる方法、見つけたやりたいことを勉強や進路選びにつなげる方法も、高校生・中学生向けに解説します。
執筆:坪田塾 西荻窪校 講師 美口
目次(クリックで開閉)
・「やりたいことが見つからない」と悩む高校生は多い
┗高校生の約8割が「自分の将来に不安を感じている」
┗やりたいことが見つからないのは「知らない」から
┗「何のために勉強するのか分からない」と感じたら
・やりたいことの見つけ方|アウトプットで考えを形にする3ステップ
┗ステップ1:少しでも興味のある職業を30〜50個書き出す
┗ステップ2:職業名(名詞)を「〜したい」(動詞)に置き換える
┗ステップ3:書き出したことを、周りの人に話してみる
・なぜ「アウトプット」するとやりたいことが見えてくるのか
┗頭の中の考えは、書くことで整理される
┗話すことで、自分の本音に気づける
┗アウトプットは、勉強でも成績を伸ばす力になる
・興味の幅を広げるインプットの方法
┗職業情報サイトで仕事を調べてみる
┗オープンキャンパスや職場体験に参加する
┗授業やニュースで「気になったこと」をメモする
・やりたいことを勉強や進路選びにつなげる
┗「〜したい」から学部・学科を考える
┗アウトプットを続けるためのワークシート
┗やりたいことは変わってもいい
・学年別:やりたいことを考えるタイミング
┗中学生:高校選びの前に「興味の軸」を書き出す
┗高校1・2年生:文理選択や科目選択の前にアウトプットする
┗受験生:志望理由を言葉にして、勉強の原動力にする
・保護者ができるサポート
・よくある質問
┗30個も職業を書き出せません。どうすればいいですか?
┗やりたいことが決まらないまま、受験勉強をしてもいいのでしょうか?
┗人に話すのが恥ずかしいときはどうすればいいですか?
・まとめ:やりたいことは、アウトプットで見つかる
「やりたいことが見つからない」と悩む高校生は多い
やりたいことが見つからないと、「自分だけが取り残されているのでは」と不安になるかもしれません。しかし、同じ悩みを抱えている高校生は決して少なくありません。
高校生の約8割が「自分の将来に不安を感じている」
国立青少年教育振興機構「高校生の進路と職業意識に関する調査報告書」(2023年6月公表)では、日本・アメリカ・中国・韓国の高校生を対象に、進路や職業についての意識を調べています。この調査で、「自分の将来に不安を感じている」と答えた日本の高校生は8割弱にのぼり、4か国の中で最も高い割合でした。また、同じ調査を繰り返す中で、その割合は年々高くなっていると報告されています。
同じ調査では、日本の高校生は「職業の種類や内容」や「進路選択の方法」について学校で学んだ経験が他の国より多い一方で、働くことに「楽しい」というイメージを持つ割合は4か国で最も低いという結果も出ています。知識としては学んでいても、「自分は何がしたいのか」までは結びついていない高校生が多いのかもしれません。
やりたいことが見つからないのは「知らない」から
やりたいことが見つからない大きな理由の一つは、世の中にどんな仕事や学問があるのかを、まだ十分に知らないことです。知らないものを「やりたい」と思うことはできません。
もう一つの理由は、興味や関心が頭の中でぼんやりしたままになっていることです。「なんとなく面白そう」と感じたことがあっても、言葉にしないままでいると、すぐに忘れてしまいます。やりたいことを見つけるには、「知ること(インプット)」と「言葉にすること(アウトプット)」の両方が必要なのです。
「何のために勉強するのか分からない」と感じたら
やりたいことが見つからないと、勉強の目的も見えにくくなります。しかし、やりたいことが決まっていないからこそ、今の勉強が大切だともいえます。
勉強の成績が上がれば、将来やりたいことが見つかったときに選べる進路の幅が広がります。また、さまざまな教科を学ぶ中で、「この分野は面白い」と思えるものに出会えることもあります。勉強は、やりたいことを見つけるための「選択肢を増やす行動」でもあるのです。
やりたいことの見つけ方|アウトプットで考えを形にする3ステップ
ここからは、アウトプットを使ってやりたいことを見つける3つのステップを紹介します。ノートやスマホのメモに、実際に書き出しながら進めてみてください。

ステップ1:少しでも興味のある職業を30〜50個書き出す
まずは、少しでも興味がある職業を、できるだけたくさん書き出してみましょう。目安は30〜50個です。
このとき大切なのは、今の自分の能力や成績は気にしないことです。「自分には無理そう」と思う職業でも、少しでも「いいな」と感じたら書き出してください。テレビやSNSで見かけた仕事、身近な大人の仕事、漫画やドラマに出てくる仕事など、どんなきっかけでもかまいません。
30個以上となると、知っている職業だけではすぐに書けなくなるかもしれません。そんなときは、職業について調べることから始めましょう。調べる過程そのものが、自分の興味の幅を広げることにつながります。
ステップ2:職業名(名詞)を「〜したい」(動詞)に置き換える
次に、書き出した職業名を「〜したい」という動詞の形に置き換えてみましょう。たとえば、「高校の先生」と書いたなら、その職業の何に魅力を感じたのかを考え、「人の成長を見守りたい」「分かりやすく教えたい」といった言葉に変えます。
職業名のままだと、「高校の先生になれなかったら終わり」と考えてしまいがちです。しかし、「人の成長を見守りたい」という動詞にすると、教員以外にも、塾の講師、スポーツのコーチ、人事の仕事、カウンセラーなど、さまざまな道が見えてきます。
書き出したすべての職業を動詞に置き換えたら、似ている言葉をグループに分けてみましょう。繰り返し出てくる言葉が、あなたの「興味の軸」です。置き換えの例を表にまとめました。
| 職業名(名詞) | 動詞に置き換えると | 見えてくる興味の軸 | 関連する学部・分野の例 |
|---|---|---|---|
| 高校の先生 | 人の成長を見守りたい | 人を支える・育てる | 教育学、心理学 |
| ゲームクリエイター | 人を楽しませる仕組みを作りたい | ものづくり・企画 | 情報工学、デザイン |
| 医師・看護師 | 困っている人の役に立ちたい | 人を助ける | 医学、看護学、福祉 |
| 建築士 | 人が快適に暮らせる空間を作りたい | ものづくり・暮らし | 建築学、都市計画 |
| 記者・アナウンサー | 知らないことを調べて伝えたい | 調べる・伝える | 社会学、メディア学、文学 |
ステップ3:書き出したことを、周りの人に話してみる
最後に、書き出した職業名や「〜したい」という言葉を、頭の中だけで眠らせておかずに、友人や家族、学校の先生など、周りの人にどんどん話してみましょう。
人に話そうとすると、「なぜそう思うのか」を説明する必要が出てきます。その過程で、自分でも気づいていなかった理由や本音が見えてくることがあります。また、聞いた人から「それならこんな仕事もあるよ」「あなたは昔からこういうことが好きだったよね」と、新しい視点をもらえることもあります。
なぜ「アウトプット」するとやりたいことが見えてくるのか
やりたいことを見つけるうえで、なぜアウトプットがこれほど大切なのでしょうか。理由を3つ紹介します。
頭の中の考えは、書くことで整理される
頭の中で考えているだけだと、考えはぐるぐると回り続け、なかなかまとまりません。紙やスマホに書き出すことで、考えが目に見える形になり、「自分はこういうことに興味があるんだ」と客観的に整理できるようになります。
30〜50個の職業を書き出し、それを動詞に置き換えていく作業は、まさに頭の中の考えを外に出して整理するアウトプットです。
話すことで、自分の本音に気づける
人に話すときは、相手に伝わるように言葉を選び、理由を説明しようとします。その中で、「本当はこういう理由で興味があったんだ」と、自分の本音に気づくことがよくあります。
また、口に出して宣言することで、「やってみよう」という気持ちが強くなるという効果もあります。やりたいことは、話せば話すほど、自分の中で形がはっきりしていきます。
アウトプットは、勉強でも成績を伸ばす力になる
アウトプットの力は、やりたいことを見つけるときだけでなく、勉強でもとても大切です。テキストを読むだけの「インプット」中心の勉強よりも、覚えた内容を思い出したり、人に説明したりする「アウトプット」を取り入れたほうが、記憶に残りやすいことが知られています。
坪田塾でも、学んだことを自分の言葉で説明するアウトプットを大切にしています。勉強でのアウトプットの方法は、教科書・テキストの覚え方|アウトプットで記憶に残す暗記のコツで詳しく紹介しています。
興味の幅を広げるインプットの方法
アウトプットの材料になるのが、インプットです。ステップ1で30〜50個の職業を書き出すためにも、普段から興味の幅を広げておきましょう。
職業情報サイトで仕事を調べてみる
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag(じょぶたぐ)」では、さまざまな職業について、仕事の内容や必要な資格、向いている人の特徴などを調べることができます。気になる職業から関連する職業へとたどっていくと、今まで知らなかった仕事に出会えるはずです。
調べた職業の中で「面白そう」と思ったものは、すぐにリストに書き加えていきましょう。
オープンキャンパスや職場体験に参加する
大学のオープンキャンパスや、学校の職場体験、企業の見学会などに参加すると、実際にその分野で学んでいる人や働いている人の話を直接聞くことができます。ネットで調べるだけでは分からない雰囲気や、やりがいを感じられる貴重な機会です。
参加したあとは、「何が面白かったか」「どんな人がいたか」をメモしておきましょう。これも立派なアウトプットです。
授業やニュースで「気になったこと」をメモする
普段の授業やニュース、本、SNSなどで「これはなぜだろう」「もっと知りたい」と感じたことがあったら、すぐにメモする習慣をつけましょう。小さな「気になる」の積み重ねが、やりたいことの種になります。
メモがたまってきたら見返して、どんな分野のことが多いかを確認してみてください。自分でも気づいていなかった興味の傾向が見えてくることがあります。
やりたいことを勉強や進路選びにつなげる
やりたいことが少しずつ見えてきたら、それを今の勉強や進路選びにつなげていきましょう。
「〜したい」から学部・学科を考える
大学の学部・学科を選ぶときも、職業名ではなく「〜したい」という動詞から考えるのがおすすめです。「人の心の動きを知りたい」なら心理学、「社会の仕組みを変えたい」なら法学や政治学、「新しい技術で生活を便利にしたい」なら工学や情報学など、学ぶ分野が見えてきます。
学びたい分野が決まれば、受験に必要な科目も明確になり、「何のために勉強するのか」という疑問にも答えが出ます。学部選びについては、大学の選び方に関するコラムも参考にしてください。
アウトプットを続けるためのワークシート
やりたいことを見つける作業は、一度で終わりではありません。定期的に書き出して見直すことで、考えが深まっていきます。次のような項目でワークシートを作ってみましょう。
| 項目 | 書くこと | 記入例 |
|---|---|---|
| 気になる職業 | 少しでも興味がある職業を30〜50個 | 高校の先生、建築士、ゲームクリエイター… |
| 〜したい | 職業名を動詞に置き換える | 人の成長を見守りたい、人を楽しませたい |
| 興味の軸 | くり返し出てくる言葉をまとめる | 人を支える、ものづくり |
| 学びたい分野 | 興味の軸に関係する学部・学科 | 教育学部、情報工学科 |
| 話した相手と反応 | だれに話し、どんな意見をもらったか | 担任の先生:「心理学も向いていそう」 |
3か月に1回など、時期を決めて書き直すと、自分の興味の変化にも気づくことができます。
やりたいことは変わってもいい
一度見つけたやりたいことが、あとで変わることもあります。それは決して悪いことではありません。新しい経験や知識が増えるたびに、興味が変わるのは自然なことです。
大切なのは、「〜したい」という興味の軸を持ち続けることです。軸がはっきりしていれば、具体的な職業や進路が変わっても、自分らしい選択ができるようになります。
学年別:やりたいことを考えるタイミング
やりたいことを考えるのに早すぎることはありませんが、進路の節目に合わせて意識しておくと、選択に生かしやすくなります。
中学生:高校選びの前に「興味の軸」を書き出す
中学生にとって最初の大きな進路選択は、高校選びです。普通科か専門学科か、どんな特色のある高校に進むかによって、高校で学べることは変わります。高校受験の前に一度、興味のある職業や「〜したい」を書き出しておくと、志望校を選ぶときの判断材料になります。面接や志望理由書で「高校で何をしたいか」を聞かれたときにも役立ちます。
高校1・2年生:文理選択や科目選択の前にアウトプットする
高校1・2年生では、文系・理系の選択や、受験に必要な科目の選択が待っています。「なんとなく数学が苦手だから文系」と決める前に、興味の軸と、それに関係する学部・学科を調べてみましょう。行きたい学部によって必要な科目が変わるため、早めに考えておくことで、後から困ることを防げます。
受験生:志望理由を言葉にして、勉強の原動力にする
受験生になると、志望校や学部を決め、総合型選抜や推薦入試では志望理由書や面接で自分の考えを伝える必要があります。これまで書き出してきた「〜したい」は、そのまま志望理由の土台になります。目標がはっきりすれば、「何のために勉強するのか」が明確になり、受験勉強を最後までやりきる原動力にもなります。
保護者ができるサポート
お子さまが「やりたいことがない」と話していると、保護者の方も心配になるかもしれません。そんなときは、無理に答えを出させようとせず、お子さまのアウトプットの「聞き役」になってあげてください。
「最近、何か気になったことはある?」「どうしてそれが面白いと思ったの?」と問いかけ、否定せずに話を聞くことで、お子さまは自分の考えを整理しやすくなります。また、保護者自身の仕事の話や、学生時代に興味を持っていたことを話してあげるのも、お子さまにとって職業を知る良いきっかけになります。
よくある質問
30個も職業を書き出せません。どうすればいいですか?
最初から30個書けなくても大丈夫です。まずは10個から始め、職業情報サイトで調べたり、家族や友だちに「どんな仕事を知っている?」と聞いたりしながら、少しずつ増やしていきましょう。調べる過程で興味の幅が広がっていきます。
やりたいことが決まらないまま、受験勉強をしてもいいのでしょうか?
もちろん大丈夫です。勉強を続けて成績を上げておくことは、将来やりたいことが見つかったときの選択肢を広げることにつながります。受験勉強と並行して、少しずつやりたいことのアウトプットを続けていきましょう。
人に話すのが恥ずかしいときはどうすればいいですか?
まずは書くことから始めましょう。書くことも立派なアウトプットです。慣れてきたら、信頼できる家族や先生など、話しやすい人を一人選んで伝えてみてください。一人に話せると、ほかの人にも話しやすくなります。
やりたいことや進路について、一人で考えるのが難しいときは、相談できる大人を見つけるのも一つの方法です。坪田塾では、講師が一人ひとりの性格や興味に合わせて、指導を行うだけでなく進路についても一緒に考えています。自宅から指導を受けられるオンライン校もあります。
まとめ:やりたいことは、アウトプットで見つかる
やりたいことが見つからないのは、あなただけではありません。最後に、ポイントをおさらいしましょう。
・日本の高校生の約8割が将来に不安を感じている。やりたいことが見つからないのは珍しいことではない
・ステップ1:少しでも興味のある職業を30〜50個書き出す
・ステップ2:職業名を「〜したい」という動詞に置き換え、興味の軸を見つける
・ステップ3:書き出したことを周りの人に話し、考えを深める
やりたいことは、頭の中で考えているだけでは見つかりません。書き出し、話し、アウトプットすることで、少しずつ形になっていきます。まずは今日、気になる職業を10個書き出すところから始めてみてください。
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