
「新しい内容をちゃんと覚えられるかな」「勉強したはずなのに、テストで思い出せない」。そんな不安や悩みを感じたことはありませんか?
同じ時間をかけて勉強するなら、少しでも多く、長く覚えていられるほうがうれしいですよね。実は、勉強するときの「心構え」を少し変えるだけで、記憶への残り方が変わることが分かっています。
本記事では、「後で人に教えるつもり」で勉強すると記憶に残りやすいという研究を紹介し、その理由を解説します。さらに、高校生・中学生が今日から実践できる「教えるつもり勉強法」の具体的なやり方や、あわせて押さえておきたい記憶のコツも紹介します。
執筆:坪田塾 茨木校 講師 岡本
目次(クリックで開閉)
・普段の勉強、どうやって覚えていますか?
┗読むだけの勉強が記憶に残りにくい理由
┗同じ時間で、もっと覚えられる方法がある
・「教えるつもり」で勉強すると記憶に残る|研究から分かったこと
┗「テストをする」と「人に教えてもらう」と伝えた実験
┗なぜ「教えるつもり」だと覚えやすいのか
┗実際に教えるとさらに理解が深まる「プロテジェ効果」
・今日からできる「教えるつもり勉強法」のやり方
┗ステップ1:教える相手を具体的にイメージする
┗ステップ2:教えるつもりで読み、要点をメモする
┗ステップ3:何も見ずに説明してみる
┗ステップ4:相手からの質問を想定して答えを用意する
・あわせて押さえたい記憶のコツ
┗思い出す練習を繰り返す
┗間隔をあけて復習する
┗睡眠をしっかりとる
・一人でもできる「セルフ授業」のやり方
┗ノートやホワイトボードを黒板に見立てる
┗説明を録音して聞き返す
・教えるつもり勉強法を続けるコツ
┗最初から完璧に説明できなくていい
┗実際に人に教えてみる
・高校生・中学生、それぞれの活用法
┗高校生:記述問題や小論文の対策に生かす
┗中学生:定期テストの前に「教える準備」をする
・保護者ができるサポート
・よくある質問
┗実際に人に教えなくても、効果はありますか?
┗教えるつもりで勉強すると、時間がかかりませんか?
┗友だちと教え合うときに気をつけることはありますか?
┗説明するのが苦手でも効果はありますか?
┗暗記科目でも使えますか?
・まとめ:「テストされる」から「教えてあげる」へ
普段の勉強、どうやって覚えていますか?
みなさんは普段、どのようにテキストを読み、その内容を覚えているでしょうか。
・ポイントを整理しながら読む
・とりあえず何度もくり返し読む
・マーカーを引きながら読む
どれも勉強の方法として間違いではありません。しかし、やり方によっては、時間をかけたわりに記憶に残っていない、ということも起こります。
読むだけの勉強が記憶に残りにくい理由
テキストを何度も読んでいると、内容が見慣れたものになり、「もう覚えた」と感じやすくなります。しかし、それは「見れば分かる」状態であって、「何も見ずに思い出せる」状態ではありません。
テストで求められるのは、覚えた知識を何も見ずに引き出して使う力です。読むだけのインプット中心の勉強では、この力が十分に鍛えられないため、いざテストになると思い出せないということが起こるのです。
同じ時間で、もっと覚えられる方法がある
せっかく同じ時間をかけて勉強するなら、少しでも効率よく覚えたいものです。そこで注目したいのが、勉強するときの「目的意識」です。
「何のために覚えるのか」という意識の違いによって、同じ内容を同じ時間で勉強しても、記憶への残り方が変わることが研究で示されています。次の章で、その研究を紹介します。
「教えるつもり」で勉強すると記憶に残る|研究から分かったこと
「人に教えると、自分の理解が深まる」という話を聞いたことがある人は多いでしょう。実は、実際に教えなくても、「後で教えるつもり」で勉強するだけで記憶に残りやすくなることが分かっています。
「テストをする」と「人に教えてもらう」と伝えた実験
アメリカのワシントン大学セントルイス校などの研究チームが2014年に発表した研究では、参加者を2つのグループに分け、同じ文章を同じ時間だけ読んで覚えてもらいました。
・グループA:「この後、内容についてテストをします」と伝える
・グループB:「この後、内容をほかの人に教えてもらいます」と伝える
実際には、グループBも人に教えることはせず、両方のグループが同じテストを受けました。すると、「教えるつもり」で勉強したグループBのほうが、多くの内容を思い出すことができ、特に文章の重要なポイントをよく覚えていたと報告されています。また、思い出した内容も、整理された形で記憶されていたといいます。

なぜ「教えるつもり」だと覚えやすいのか
「教えるつもり」で勉強すると記憶に残りやすい理由として、次のようなことが考えられています。
重要なポイントを探しながら読むから
人に教えるためには、内容の中で何が大事なのかを見きわめる必要があります。そのため、自然と重要なポイントに注意を向けながら読むようになります。
内容を整理しながら覚えるから
人に分かりやすく説明するには、話の順番や、情報どうしのつながりを考える必要があります。この「整理する」作業が、記憶を引き出しやすい形で残すことにつながります。
適度な緊張感が生まれるから
「人に教える」ことは、「テストを受ける」ことよりも、うまくできなかったときの責任を感じやすいアウトプットです。この適度な緊張感が、学習に向かう集中力を高めると考えられています。
「テストするつもり」と「教えるつもり」の違いを表にまとめました。
比べるポイント | テストするつもり | 教えるつもり |
|---|---|---|
| 目標 | 自分が答えられればよい | 相手が理解できるように説明する |
| 読み方 | 出そうなところを覚えようとする | 重要なポイントと全体の流れをつかもうとする |
| 覚え方 | 用語や答えを単独で覚えがち | 理由やつながりを整理して覚える |
| 気持ち | 自分のための勉強 | 相手のことも考える分、適度な緊張感がある |
| 記憶への残り方 | ポイント以外も含めて断片的になりやすい | 重要な点が整理された形で残りやすい |
実際に教えるとさらに理解が深まる「プロテジェ効果」
「教えるつもり」で勉強するだけでも効果がありますが、実際に人に教えると、教える側の理解がさらに深まることも知られています。これは、教わる人(プロテジェ)のために学ぶことで、教える側の学びが深まることから「プロテジェ効果」と呼ばれることがあります。
人に教えようとすると、説明の仕方を工夫したり、相手の質問に答えたりする中で、自分の理解のあいまいな部分に気づかされます。教えるつもりで準備し、機会があれば実際に教えてみる。この2段階で取り組むと、記憶はより確かなものになります。
今日からできる「教えるつもり勉強法」のやり方
ここからは、「教えるつもり」で勉強する具体的な方法を4つのステップで紹介します。
ステップ1:教える相手を具体的にイメージする
まずは、だれに教えるつもりで勉強するのかを決めましょう。「この単元を初めて習う後輩」「授業を休んだクラスメイト」「勉強が苦手な友だち」など、具体的な相手をイメージするのがポイントです。
相手が具体的であるほど、「この言葉は分かりにくいかな」「ここは例を出したほうがいいかな」と、説明の仕方まで考えるようになり、理解がより深まります。
ステップ2:教えるつもりで読み、要点をメモする
テキストを読むときは、「これを相手に説明するなら、何を伝えればいいか」を考えながら読みましょう。読み終わったら、教えるときに必要な要点を3つ程度にしぼってメモします。
要点をしぼる作業そのものが、内容の中で何が大事なのかを見きわめる練習になります。
ステップ3:何も見ずに説明してみる
メモやテキストを閉じて、イメージした相手に説明するつもりで、声に出したり紙に書いたりしてみましょう。うまく説明できなかったところは、まだ理解や記憶が十分でない部分です。もう一度テキストで確認し、説明できるようになるまで繰り返します。
何も見ずに思い出して説明することは、記憶を定着させる効果の高いアウトプットです。
ステップ4:相手からの質問を想定して答えを用意する
最後に、教える相手から「なぜそうなるの?」「具体的にはどういうこと?」と質問されたと想定し、答えを考えてみましょう。質問に答えられるようになれば、表面的な暗記ではなく、本当の意味で理解できている証拠です。
教科ごとの「教えるつもり勉強」の例を表にまとめました。
教科 | 教えるつもりで取り組む例 | 想定する質問の例 |
|---|---|---|
| 英語 | 文法のルールを、例文を使って説明する | なぜここは現在完了形なの? |
| 数学 | 例題の解き方を、途中式の理由まで説明する | なぜこの公式を使うの? |
| 国語 | 文章の要旨を、3行でまとめて説明する | 筆者がいちばん言いたいことは何? |
| 理科 | 実験の手順と結果を、理由とあわせて説明する | 条件を変えたら結果はどうなる? |
| 社会 | 出来事の原因と結果を、流れで説明する | なぜその出来事が起きたの? |
あわせて押さえたい記憶のコツ
「教えるつもり勉強法」に加えて、次のような記憶のコツも取り入れると、さらに効果が高まります。
思い出す練習を繰り返す
覚えた内容を、何も見ずに思い出そうとすることで、記憶はより強くなります。テキストを読み返すよりも、問題を解いたり、白紙に書き出したりして「思い出す」回数を増やしましょう。
思い出すときに苦労した内容ほど、記憶に残りやすいといわれています。すぐに答えを見るのではなく、少し考えてから確認する習慣をつけましょう。教えるつもり勉強法のステップ3(何も見ずに説明する)は、この「思い出す練習」そのものです。
間隔をあけて復習する
人は、覚えたことを時間とともに忘れていきます。一度覚えた内容も、翌日、1週間後、1か月後のように、間隔をあけて復習することで、長く記憶に残るようになります。復習のタイミングや思い出す練習のやり方は、教科書・テキストの覚え方|アウトプットで記憶に残す暗記のコツで詳しく紹介しています。
睡眠をしっかりとる
睡眠には、その日に学んだことを記憶として定着させる働きがあるといわれています。夜遅くまで勉強して睡眠時間を削るよりも、しっかり眠ったほうが、結果的に多くのことを覚えていられます。
特に、覚えたい内容は寝る前に軽く見直し、翌朝に思い出してみるのがおすすめです。睡眠をはさむことで記憶が整理され、朝には意外とすらすら思い出せることに気づくはずです。
一人でもできる「セルフ授業」のやり方
教える相手がいなくても、「教えるつもり勉強法」は一人で実践できます。おすすめなのが、自分が先生になったつもりで授業をする「セルフ授業」です。
ノートやホワイトボードを黒板に見立てる
ノートやホワイトボードを黒板に見立てて、単元の内容を授業のように説明しながら書いていきます。「今日のテーマは〇〇です」「ポイントは3つあります」と、実際に授業をしているつもりで進めると、内容が自然と整理されます。
説明しながら書いたノートは、そのまま自分だけの分かりやすいまとめノートになります。テスト前の見直しにも役立ちます。
説明を録音して聞き返す
スマホの録音機能を使って、自分の説明を録音してみるのもおすすめです。聞き返してみると、「ここの説明は分かりにくいな」「この部分は言葉につまっているな」と、理解があいまいなところが客観的に分かります。
録音した説明は、通学時間などに聞き返す復習教材としても使えます。自分の声で説明した内容は、記憶に残りやすいと感じる人も多いでしょう。
教えるつもり勉強法を続けるコツ
教えるつもり勉強法は、慣れるまでは少し時間がかかるかもしれません。続けるためのコツを紹介します。
最初から完璧に説明できなくていい
最初はうまく説明できなくて当然です。説明につまったところは、「ここがまだ分かっていない」と気づけたチャンスだと考えましょう。分からない部分が分かること自体が、勉強の大きな前進です。
実際に人に教えてみる
慣れてきたら、実際に家族や友だちに教えてみるのもおすすめです。相手の反応を見ながら説明することで、自分の理解がどこまで伝わるのかが分かります。友だちと勉強するときは、お互いに得意な単元を教え合うと、二人とも理解が深まります。
高校生・中学生、それぞれの活用法
教えるつもり勉強法は、学年や目的に合わせて使い方を工夫できます。
高校生:記述問題や小論文の対策に生かす
大学入試では、知識をただ覚えているだけでなく、それを使って説明する力が問われる記述問題や小論文、面接があります。日ごろから「人に説明するつもり」で勉強していると、知識を筋道立てて表現する力が自然と身につき、こうした問題にも強くなります。
中学生:定期テストの前に「教える準備」をする
中学生は、定期テストの勉強で「教えるつもり勉強法」を取り入れてみましょう。テスト範囲の単元ごとに、「後輩に教えるならどう説明するか」を考えてまとめておくと、テスト本番でも内容を思い出しやすくなります。高校受験に向けた復習でも、そのまま活用できます。
保護者ができるサポート
ご家庭で「教えるつもり勉強法」を後押しするなら、保護者の方がお子さまの「生徒役」になってあげるのがおすすめです。「今日はどんなことを勉強したの?教えてくれる?」と声をかけ、数分間、説明を聞いてあげてください。
説明がうまくできなくても、指摘するのではなく、「なるほど、そういうことなんだね」と興味を持って聞くことが大切です。教える相手がいるという経験が、お子さまの学習意欲と記憶の定着を後押しします。
また、保護者の方自身が「最近こんなことを知ったよ」と、学んだことを家族に話す姿を見せるのもおすすめです。学んだことを人に話すのが当たり前の家庭では、子どもも自然とアウトプットの習慣を身につけやすくなります。
よくある質問
実際に人に教えなくても、効果はありますか?
紹介した研究では、実際には教えなくても、「教えるつもり」で勉強しただけで記憶に残りやすくなったと報告されています。まずは教える相手をイメージするところから始めてみましょう。実際に教える機会があれば、さらに理解が深まります。
教えるつもりで勉強すると、時間がかかりませんか?
要点を整理したり、説明を考えたりする分、最初は少し時間がかかるかもしれません。しかし、記憶に残りやすくなる分、何度も読み返す時間が減るため、結果的には効率の良い勉強になります。
友だちと教え合うときに気をつけることはありますか?
教え合いは効果的ですが、おしゃべりになってしまうと勉強になりません。「15分ずつ交代で教える」「1人1単元を担当する」など、時間と役割を決めて取り組みましょう。教わる側も、分からないところを遠慮せずに質問することで、教える側の理解が深まります。
説明するのが苦手でも効果はありますか?
説明が苦手な人ほど、効果を実感しやすいといえます。最初はうまく言葉にできなくても、「どう説明すれば伝わるか」を考えること自体が、内容を整理する練習になります。まずは要点を1つだけ、一文で説明するところから始めてみましょう。
暗記科目でも使えますか?
使えます。英単語や歴史の用語など、暗記が中心の内容でも、「この用語を説明するなら」「この出来事を流れで話すなら」と考えることで、単独の知識がつながり、忘れにくくなります。
自分に合った勉強法を見つけるのが難しいときは、だれかと一緒に考えるのも一つの方法です。坪田塾では、生徒が学んだことを講師に説明するアウトプットを大切にしながら、一人ひとりに合った勉強の進め方を一緒に考えています。自宅から指導を受けられるオンライン校もあります。
まとめ:「テストされる」から「教えてあげる」へ
勉強するときの心構えを少し変えるだけで、記憶への残り方は変わります。最後に、ポイントをおさらいしましょう。
・「後で教えるつもり」で勉強すると、「後でテストがある」と思って勉強するより記憶に残りやすい
・教えるつもりだと、重要なポイントを探し、内容を整理しながら覚えるようになる
・相手をイメージし、要点をしぼり、何も見ずに説明し、質問に答える4ステップで実践する
・思い出す練習、間隔をあけた復習、十分な睡眠もあわせて取り入れる
「先生にテストされる」という意識から一歩進んで、「後でだれかに教えてあげる」つもりで勉強してみてください。同じ時間でも、きっと覚えられることが増えていくはずです。
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