
先生から「ここまでで質問はありますか?」と聞かれて、本当はよくわかっていないのに「大丈夫です」と答えてしまったことはありませんか?
わからないところがあっても、「こんなことを聞いてもいいのかな」「説明を止めてしまうのは申し訳ない」と感じて、質問をためらってしまうこともあるのではないでしょうか。
実は、相手がわからないところを素直に口にできるかどうかは、「問いかけ方」によって大きく変わります。聞きたいことは同じでも、言葉を少し変えるだけで、相手の反応がまったく違ってくるのです。
本記事では、問いかけの意味や「質問」との違いを整理したうえで、勉強のつまずきを引き出す問いかけ方のコツを、教え合いやグループ学習など場面別の例文とともに紹介します。さらに、問いかけを自分自身に向けることで、勉強の理解を深める方法もお伝えします。
執筆:坪田塾 上本町校 校長 南條 優司
目次(クリックで開閉)
・問いかけとは?意味と「質問」との違い
┗問いかけの意味
┗「質問」との違い
・「質問ある?」では、わからないところが見えてこない理由
┗「ないです」「大丈夫です」が返ってくる
┗「こんなこともわからないの?」と思われたくない
┗「ある?」は上から目線に聞こえることもある
┗わからないままにすると、つまずきが積み重なる
・わからないところを引き出す問いかけ方の3つのコツ
┗コツ1:「なんで?って思うところ」でハードルを下げる
┗コツ2:「ある?」ではなく「ない?」「なかった?」で聞く
┗コツ3:答えを急がず、「いい質問だね」と受け止める
・勉強の場面別:問いかけの例文
┗友だちと教え合うとき
┗グループ学習・勉強会で
┗先生に質問するときは「具体的に」伝えよう
・成績が伸びる人は「自分への問いかけ」がうまい
┗「なぜ?」と自分に問いかけると理解が深まる
┗「人に説明できる?」でアウトプットにつなげる
┗自分にも「わからないところ、ない?」と問いかける
・保護者の方へ:勉強の様子を聞くときも「ない?」を
・よくある質問
┗「ない?」と聞いても「ない」と言われたら?
┗質問するのが苦手です。どうすればいいですか?
┗作文での「問いかけ」の使い方は?
・まとめ:「ある?」より「ない?」で勉強の理解が深まる
問いかけとは?意味と「質問」との違い
まずは、「問いかけ」という言葉の意味を確認しておきましょう。
問いかけの意味
問いかけとは、相手に問いを投げかけることです。単に答えを求めるだけでなく、相手に考えるきっかけを与えたり、自分の考えや気持ちを言葉にするきっかけを作ったりする、という意味合いも含まれます。
たとえば、授業のあとに「どこか引っかかったところ、なかった?」と声をかけるのは、正解のある答えを聞き出すためではありません。相手が自分の理解を振り返り、あいまいな部分に気づくための「入り口」を用意する言葉です。こうした言葉が、問いかけの代表例です。
「質問」との違い
問いかけと似た言葉に「質問」があります。どちらも相手に何かを聞くという点は同じですが、目的や答え方に違いがあります。
項目 | 問いかけ | 質問 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 相手の理解を深めるだけでなく、自分自身の気づきにもつながる | わからないことを聞いて、答えや情報を得る |
| 答え | 決まった答えがないことが多い | 決まった答えがあることが多い |
| 勉強での例 | 「この単元で、なんで?って思うところ、ない?」 | 「この問題の解き方を教えてください」 |
| よく使う場面 | 教え合い、グループ学習、自分の勉強の振り返り | 授業や自習でわからない点を確認するとき |
勉強では、問いかけと質問の両方が欠かせません。上手な問いかけがあると、相手は「どこがわからないのか」に気づき、具体的な質問ができるようになります。つまり、問いかけは質問を引き出し、理解を深めるための大切なきっかけなのです。
「質問ある?」では、わからないところが見えてこない理由
勉強を教えたあと、「何か質問ある?」「わからないところある?」と聞くことはよくあります。しかし、この問いかけで返ってくるのは、多くの場合「ない」「大丈夫」という答えです。
「ないです」「大丈夫です」が返ってくる
「質問ある?」と聞かれて、すぐに具体的な質問を返せる人は多くありません。わからないところがはっきりしていない場合はもちろん、少し気になる点があっても、「わざわざ聞くほどではないかな」と考えて、「大丈夫です」と答えてしまうのです。
「質問ある?」という問いかけで本音を引き出せるのは、お互いに何でも言い合える、よほど関係性が築けている場合に限られます。そのためほとんどの場合、この問いかけ方は、思ったほどの効果を発揮しないのです。
「こんなこともわからないの?」と思われたくない
なぜ「質問ある?」では、わからないところが出てこないのでしょうか。それは、問いかけられた側の立場になってみるとわかります。
「丁寧に教えてくれたのに、わからないと言ったら申し訳ない」
「こんな基本的なことを聞くのは恥ずかしい」
「ちゃんと聞いていなかったと思われたら嫌だな」
「どうして自分だけ理解できないんだろう」
このように、問いかける側にそのつもりがなくても、相手に罪悪感や劣等感、申し訳なさを感じさせてしまうことがあるのです。その結果、「あとで自分で調べればいいか」と自己完結したり、わからないまま抱え込んだりしてしまいます。中には、「質問するのは悔しい」とプライドが邪魔をしてしまう人もいるでしょう。
「ある?」は上から目線に聞こえることもある
実は、「質問ある?」という言葉には、問いかける側の無意識の傲慢さが含まれてしまうこともあります。
「(全部完璧に説明したけど、他に)質問ある?」
「(これだけ丁寧に教えたんだから、わかったよね?)わからないところある?」
伝え方によっては、このような意図があるように受け取られてしまうのです。「ある?」という問いかけは、場合によっては「上から目線」「威圧的」という印象につながり、相手が質問しにくい雰囲気を作ってしまいます。
わからないままにすると、つまずきが積み重なる
勉強は、前に学んだことの上に新しい内容を積み上げていくものです。特に数学や英語は、一つの単元でのつまずきが、その後の単元の理解にも影響します。「質問ある?」に「ない」と答えて、わからない部分をそのままにしてしまうと、気づかないうちにつまずきが積み重なっていきます。
だからこそ、わからないところを早めに口に出せる問いかけが大切です。教える側も教わる側も、問いかけ方を少し工夫するだけで、つまずきに早く気づき、理解を深めることができます。
わからないところを引き出す問いかけ方の3つのコツ
では、どのように問いかければ、相手はわからないところを素直に話せるのでしょうか。ポイントは3つです。

コツ1:「なんで?って思うところ」でハードルを下げる
1つ目のコツは、「質問」や「わからないところ」という重い言葉の前に、もっと気軽に答えられる言葉を添えることです。おすすめは、「なんで?って思うところとか」という言葉です。
・「今の説明で、なんで?って思うところとか、ない?」
・「どこか引っかかったところとか、ない?」
・「ちょっとでもモヤっとしたところ、なかった?」
「なんで?って思うところ」と聞かれると、「わからないわけではないけど、なんでこの式になるのかは少し気になる」と考えやすくなります。「わからない」と認める重さを取り除き、口に出すハードルを下げる効果があるのです。
コツ2:「ある?」ではなく「ない?」「なかった?」で聞く
2つ目のコツであり、この問いかけ方の一番の肝となるのが、「ない?」「なかった?」という聞き方です。これだけで、相手の反応は大きく変わります。

「質問ある?」と聞かれると、「ある」とはっきり答えるのは意外と勇気がいります。一方で、「引っかかったところ、なかった?」と聞かれると、「そういえば、ここが少し…」「この部分がちょっと自信ないかも」と、答えるハードルがぐっと低くなります。
おもしろいのは、「ある?」と「ない?」で聞きたい内容はまったく同じだということです。言葉を少し変えるだけで、相手は本音を言いやすくなり、わからないところを話しやすくなる。言葉は、そして人は、本当におもしろいものですね。
コツ3:答えを急がず、「いい質問だね」と受け止める
3つ目のコツは、相手がわからないところを話してくれたら、すぐに説明を始めたり、「さっき言ったよね」と否定したりせず、まずは受け止めることです。「そこに気づけたのはいいね」「いい質問だね」と伝えると、相手は安心して次の質問もできるようになります。
せっかく問いかけで心のハードルを下げても、質問した内容を軽く扱われたり、あきれた顔をされたりすると、「やっぱり聞かなければよかった」と感じてしまいます。わからないところが見つかるのは、理解を深めるための大切な発見です。問いかけは、相手の答えを受け止める姿勢とセットで初めて効果を発揮します。
勉強の場面別:問いかけの例文
ここからは、勉強のさまざまな場面で使える問いかけの例文を紹介します。「ある?」型と「ない?」型の違いを比べてみてください。
場面 | つまずきが見えにくい問いかけ | つまずきを引き出しやすい問いかけ |
|---|---|---|
| 友だちと勉強を教え合うとき | 「わかった?質問ある?」 | 「どこか引っかかったところ、なかった?」 |
| グループ学習・勉強会で | 「意見ある人?」 | 「ちょっとでも、なんで?って思ったこと、ない?」 |
| テストを返されたあと | 「何か聞きたいことある?」 | 「解き直してみて、納得いかなかった問題、なかった?」 |
| 保護者が子どもの勉強を見るとき | 「わからないところある?」 | 「今日の授業で、なんで?って思ったこと、なかった?」 |
友だちと教え合うとき
友だちに勉強を教えたあと、「わかった?」と聞くと、多くの人は「うん、大丈夫」と答えます。でも実際には、わかったつもりになっているだけかもしれません。
「どこか引っかかったところ、なかった?」と問いかければ、「そういえば、ここが少し…」と、理解があいまいな部分を口にしやすくなります。教える側にとっても、相手がどこでつまずいているかがわかり、より的確に説明できるようになります。人に教えることは、自分の理解を確かめるアウトプットにもなるので、教える側にとっても大きな学びになります。
グループ学習・勉強会で
学校の授業などで行われるグループ学習のときも、「わからないところある人?」「意見ある人?」と聞くと、なかなか手が挙がりません。周りの目が気になり、「自分だけわかっていないと思われたくない」と感じてしまうからです。
そんなときは、「ちょっとでも、なんで?って思ったこと、ない?」と問いかけてみましょう。だれか一人が「実はここが…」と話し始めると、「自分もそこが気になってた」と、ほかのメンバーも質問しやすくなります。一人の小さな疑問が、グループ全体の理解を深めるきっかけになるのです。
先生に質問するときは「具体的に」伝えよう
今度は、あなたが聞く側になる場面を考えてみましょう。先生から「質問ある?」と聞かれても、「ない」と答えてしまう人は多いのではないでしょうか。「こんなことを聞いたら恥ずかしい」と感じてしまう気持ちは、先ほど紹介した問いかけられる側の気持ちと同じです。
そんなときは「全部わかりません」ではなく、「この問題のここまではわかったのですが、この式の変形がわかりません」というように、どこまでわかって、どこからわからないのかを具体的に伝えるのがおすすめです。わからない点がはっきりすれば、先生も答えやすくなり、自分の理解も深まります。わからないことを質問できるのは恥ずかしいことではなく、成績を伸ばすための大切な力です。
成績が伸びる人は「自分への問いかけ」がうまい
問いかけは、他人に向けるだけのものではありません。成績が伸びる人の多くは、勉強しながら自分自身に上手に問いかけています。
「なぜ?」と自分に問いかけると理解が深まる
教科書や参考書を読むとき、ただ内容を覚えようとするのではなく、「なぜこうなるんだろう?」「ほかの場合はどうなるんだろう?」と自分に問いかけながら読むと、理解がぐっと深まります。
たとえば歴史の出来事を覚えるときも、「なぜこの出来事が起きたのか?」「その結果、何が変わったのか?」と問いかけると、出来事同士のつながりが見えてきます。数学の公式も、「なぜこの公式が成り立つのか?」を考えることで、応用問題にも対応できる力がつきます。丸暗記よりも記憶に残りやすく、記述問題にも強くなります。
「人に説明できる?」でアウトプットにつなげる
勉強で特におすすめなのが、「アウトプット」につながる問いかけです。学んだ内容を、問題を解いたり、人に説明したりして外に出すことで、本当に理解できているかを確かめられます。
タイミング | 自分への問いかけ例 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 勉強を始める前 | 「今日の勉強で、何ができるようになりたい?」 | 目的がはっきりし、集中しやすくなる |
| 教科書を読むとき | 「なぜこうなるんだろう?」 | 丸暗記ではなく、理由から理解できる |
| 単元を学び終えたあと | 「何も見ずに、人に説明できる?」 | わかったつもりの部分に気づける |
| 問題を間違えたとき | 「どこで考え方がずれたんだろう?」 | 同じミスを繰り返しにくくなる |
| 1日の終わり | 「今日わかるようになったことは何?」 | 学んだことの振り返りができ、記憶に残りやすくなる |
「人に説明できる?」と自分に問いかけ、実際に声に出して説明してみると、うまく言葉にできない部分が見つかります。その部分こそ、復習すべきポイントです。問いかけとアウトプットを繰り返すことで、知識は確実に身についていきます。
自分にも「わからないところ、ない?」と問いかける
自分への問いかけでも、「ない?」の効果は同じです。「全部わかった?」と自分に聞くと、つい「まあ大丈夫だろう」と流してしまいがちです。それよりも、「なんで?って思うところ、ない?」「自信を持って解けない問題、なかった?」と問いかけるほうが、あいまいな部分に気づきやすくなります。
問題集を解き終えたら、丸つけをして終わりにするのではなく、「正解したけど、たまたま当たった問題はなかった?」と自分に問いかけてみましょう。たまたま正解した問題を見つけて解き直すことで、テスト本番で確実に得点できる力が身につきます。
保護者の方へ:勉強の様子を聞くときも「ない?」を
お子さまに「勉強でわからないところある?」と聞いても、「別に」「ない」と返されてしまう。そんな経験をお持ちの保護者の方も多いのではないでしょうか。
お子さまは、親に心配をかけたくない、あるいは「勉強できていない」と思われたくないという気持ちから、わからないところを口にしないことがあります。そんなときこそ、「今日の授業で、なんで?って思ったこととかない?」「ちょっと引っかかってる単元とか、ない?」と、ハードルの低い問いかけを試してみてください。
そして、お子さまが話し始めたら、すぐに「ちゃんと勉強しなさい」と叱るのではなく、まずは最後まで話を聞いて受け止めてあげましょう。「話してもいいんだ」という安心感が、学習の悩みを相談しやすい親子関係につながります。勉強しない中学生への声かけについては、中学生が勉強しない理由と親の対処法も参考にしてください。
よくある質問
「ない?」と聞いても「ない」と言われたら?
無理に聞き出そうとする必要はありません。「そっか。もし解いてみて引っかかるところがあったら、いつでも聞いてね」と伝えて、質問できるタイミングを相手に委ねましょう。問いかけ方を変えたことで、相手は「この人には聞いてもいいのかも」と感じているかもしれません。実際に問題を解いてみると疑問が出てくることも多いので、少し時間をおいてから、もう一度声をかけてみるのも効果的です。
質問するのが苦手です。どうすればいいですか?
まずは、「どこまでわかって、どこからわからないか」をノートに書き出してみましょう。わからない部分に線を引いたり、つまずいた問題番号をメモしたりするだけでも、質問の準備になります。いきなり口頭で質問するのが難しければ、メモを見せながら「ここがわかりません」と伝えるだけでも十分です。質問は回数を重ねるほど、上手になっていきます。
作文での「問いかけ」の使い方は?
作文や小論文では、「みなさんは〜と考えたことがあるでしょうか」のように、読み手に問いかける書き出しがよく使われます。作文での問いかけの使い方は、作文の書き方で詳しく紹介しています。
坪田塾では、講師が生徒一人ひとりに問いかけながら、どこでつまずいているのかを一緒に見つけ、自分の力で解けるようになるまでサポートしています。勉強のことはもちろん、進路や学習習慣の悩みも気軽にご相談ください。自宅から指導を受けられるオンライン校もあります。
まとめ:「ある?」より「ない?」で勉強の理解が深まる
問いかけ方を少し変えるだけで、相手の反応は大きく変わります。最後に、ポイントをおさらいしましょう。
・問いかけとは、相手が自分の考えや理解を見つめ直すきっかけをつくること
・「質問ある?」は、相手に遠慮や劣等感を感じさせ、わからないところが出にくい
・「なんで?って思うところとか」を添えて、口に出すハードルを下げる
・「ある?」ではなく「ない?」「なかった?」で問いかける
・自分への問いかけとアウトプットで、勉強の理解はさらに深まる
授業の場や友だちとの教え合いの場、そして自分自身の勉強でも、ぜひ「ない?」の問いかけを使ってみてください。わからないところを素直に口にできる問いかけが、理解を深め、成績を伸ばすきっかけになるはずです。
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