
「受験対策をどう進めればいいか分からない」「部活も定期テストも受験も、全部完璧にこなさなければ」。そんなふうに悩んでいませんか?
限られた時間の中で志望校に合格するために必要なのは、ただ頑張ることではなく、「戦略」を持って頑張ることです。
本記事では、ビジネスの世界でも広く使われている「ランチェスター戦略」の考え方を分かりやすく紹介し、それを受験勉強に応用した戦略の立て方を解説します。「戦略なんていらない、頑張るだけだ」と思っている人にこそ、ぜひ読んでいただきたい内容です。
執筆:坪田塾 講師 大野雅弘
目次(クリックで開閉)
・受験に「戦略」は必要?
┗「頑張るだけ」では、限られた時間を生かしきれない
┗戦略とは「何をやらないか」を決めること
・ランチェスター戦略とは?
┗ランチェスター戦略の成り立ち
┗第1法則(弱者の法則):局地戦なら数の差がそのまま出る
┗第2法則(強者の法則):広い戦いでは数の差が何倍にも広がる
・受験生のほとんどは「弱者」|学習時間を兵力に置き換える
┗「弱者」とは、1位以外の全員のこと
┗受験における兵力は「学習時間」
┗強者の戦略(全部やる)をとるのが一番危険
・弱者の法則を受験勉強に生かす5つの戦略
┗戦略1:第1志望校を決め、兵力を集中させる
┗戦略2:配点と出題傾向から「戦う場所」を決める
┗戦略3:合格最低点から「取るべき点数」を逆算する
┗戦略4:「やらないこと」を決める
┗戦略5:小さな勝利を積み重ねる
・兵力(学習時間)そのものを増やす工夫
┗すきま時間を「小さな局地戦」に使う
┗学習時間を記録して「見える化」する
・高校生の定期テストにも使える「弱者の戦略」
┗範囲が広いテストほど「局地戦」で攻める
┗推薦入試を考えるなら、定期テストも大切な「戦場」
・戦略を立てるときの注意点
┗「集中」と「何もしない」は違う
┗戦略は定期的に見直す
・保護者ができるサポート
・よくある質問
┗受験のために部活をやめたほうがいいですか?
┗苦手科目は捨ててもいいですか?
┗高校受験を控えた中学生にも使えますか?
・まとめ:「弱者の法則」で、限られた時間を志望校に集中させよう
受験に「戦略」は必要?
世の中には、さまざまな「戦略」があります。ビジネスでは「経営戦略」「販売戦略」「事業戦略」などがあり、受験でも「受験戦略」という言葉が使われます。では、なぜ受験に戦略が必要なのでしょうか。
「頑張るだけ」では、限られた時間を生かしきれない
受験勉強に使える時間は、だれにとっても限られています。特に現役の高校生は、学校の授業や課題、部活動、定期テストなどをこなしながら受験勉強を進めなければなりません。
やみくもにすべてを頑張ろうとすると、時間も体力も分散してしまい、どれも中途半端になりかねません。同じ時間を使うなら、合格に最も近づける使い方を考えることが大切です。それが「戦略」です。
戦略とは「何をやらないか」を決めること
戦略というと、「何をやるか」を決めることだと思われがちです。しかし本当に大切なのは、限られた資源をどこに集中させるか、つまり「何をやらないか」を決めることです。
この考え方を分かりやすく示しているのが、次に紹介する「ランチェスター戦略」です。
ランチェスター戦略とは?
ランチェスター戦略は、もともとは軍事作戦の考え方から生まれ、今ではビジネスの競争戦略としても広く使われている理論です。
ランチェスター戦略の成り立ち
ランチェスター戦略のもとになったのは、第一次世界大戦のころにイギリスのエンジニア、フレデリック・ランチェスターが発表した「ランチェスターの法則」です。戦闘で兵力の数がどのように勝敗に影響するかを、数式で表したものです。
その後、第二次世界大戦の時期に、この法則をもとにした作戦研究が進められ、さらに発展しました。日本では、この考え方がビジネスの競争戦略・販売戦略に応用され、特に中小企業の経営戦略の基本として広く知られるようになりました。
ランチェスター戦略は、大きく分けて「第1法則(弱者の法則)」と「第2法則(強者の法則)」の2つからなります。
第1法則(弱者の法則):局地戦なら数の差がそのまま出る
第1法則は、1対1で戦う「一騎打ち」や、狭い範囲で戦う「局地戦」の場合の法則です。数式にすると、次のように表されます。
戦闘力=武器の性能×兵力数
局地戦では、1人が攻撃できる相手は1人だけなので、兵力の差がそのまま戦闘力の差になります。たとえば、武器の性能が同じ500人の軍と300人の軍が戦うと、500人の軍が200人を残して勝つことになります。
一見、少ない側に勝ち目はないように見えます。しかし、戦い方を変えることで勝機を見出すことができます。たとえば、相手の500人を何らかの方法で200人と300人に分け、200人の部分だけに300人で集中して戦えば、その場面では勝つことができます。つまり、数で劣る側は「局地戦に持ち込み、兵力を一点に集中させれば勝てる」のです。
第2法則(強者の法則):広い戦いでは数の差が何倍にも広がる
第2法則は、広い範囲で多くの兵力がぶつかり合う「広域戦」「集団戦」の場合の法則です。数式にすると、次のように表されます。
戦闘力=武器の性能×兵力数の2乗
広域戦では、多くの兵が同時に複数の相手を攻撃できるため、兵力数の影響がさらに大きくなります。先ほどの例に当てはめると、500の2乗(25万)対300の2乗(9万)の戦いになり、戦闘力にして16万もの差が生まれます。計算上、500人の軍は約400人を残して勝つことになり、局地戦のとき以上に、もともとの数の差が勝敗を大きく左右します。
2つの法則の違いを表にまとめました。
比べるポイント | 第1法則(弱者の法則) | 第2法則(強者の法則) |
|---|---|---|
| 戦闘力の式 | 武器の性能×兵力数 | 武器の性能×兵力数の2乗 |
| 戦いの形 | 一騎打ち・局地戦 | 広域戦・集団戦 |
| 有利になる人 | 数で劣る側(弱者) | 数で勝る側(強者) |
| とるべき戦い方 | 範囲をしぼり、一点に集中する | 広い範囲で、数の力で押し切る |
| 受験に置き換えると | 第1志望校の対策に時間を集中する | 全教科・全範囲をまんべんなく網羅する |

受験生のほとんどは「弱者」|学習時間を兵力に置き換える
ここからは、ランチェスター戦略を受験に当てはめて考えてみましょう。
「弱者」とは、1位以外の全員のこと
「弱者」というと厳しい言い方に聞こえるかもしれません。しかし、ランチェスター戦略でいう「弱者」とは、能力が低い人のことではなく、「1位以外の全員」を指す考え方です。
つまり、ほとんどの人は「弱者」の立場にいます。そして、強者ではない私たちが「強者の戦略」をとってしまうことが、最も危険なのです。
受験における兵力は「学習時間」
受験戦略で考えると、「兵力数」は「学習時間」に置き換えることができます。受験生、特にこれから本格的に受験勉強を始めようとしている現役生の中で、学習時間をだれよりも多く持っている「強者」はほとんどいないでしょう。
つまり、受験生のほとんどは「弱者の法則」で戦うべき、ということになります。
強者の戦略(全部やる)をとるのが一番危険
受験生は、「部活も定期テストも受験も、すべて完璧にこなそう」と考えがちです。また、受験勉強でも「全教科・全範囲を同じように仕上げよう」としてしまうことがあります。これは、兵力を広く分散させて戦う「強者の戦略」です。
学習時間という兵力が限られている中でこの戦い方をすると、どの分野も十分に仕上がらないまま入試本番を迎えてしまいます。限られた学習時間は、できるだけ第1志望校の対策に集中させることが、弱者が勝つための戦略です。

弱者の法則を受験勉強に生かす5つの戦略
では、具体的にどのように受験勉強を進めればよいのでしょうか。弱者の法則を生かした5つの戦略を紹介します。
戦略1:第1志望校を決め、兵力を集中させる
まずは、戦う相手である第1志望校をはっきり決めましょう。志望校が決まらないままでは、どこに兵力を集中させればよいのかが分かりません。
第1志望校が決まれば、必要な科目や出題の傾向、合格に必要な点数が明確になります。そこから逆算して、「何に時間を使うか」を考えることが、戦略づくりのスタートです。
戦略2:配点と出題傾向から「戦う場所」を決める
志望校の入試科目の配点や、過去問の出題傾向を調べましょう。配点の高い科目、毎年よく出る分野は、限られた時間を集中させるべき「主戦場」です。
たとえば、英語の配点が他の科目の2倍ある大学なら、英語に多くの時間を使うほうが合格に近づきます。過去問を分析して、どの分野で点を取るべきかを把握しましょう。過去問の活用法は、赤本の効果的な使い方も参考にしてください。
戦略3:合格最低点から「取るべき点数」を逆算する
入試では、満点を取る必要はありません。目標は合格最低点を超えることです。合格最低点が6割なら、残りの4割は落としても合格できる、ということになります。
科目ごと・分野ごとに「ここで何点取るか」を決めておけば、すべての問題を解けるようにしようとする必要がなくなります。取るべき問題に時間を集中させることで、少ない時間でも合格点に届きやすくなります。
戦略4:「やらないこと」を決める
志望校の入試に出ない科目や分野、合格最低点を考えると優先度の低い難問などは、思い切って後回しにする勇気も必要です。参考書や問題集も、あれこれ手を出すのではなく、決めたものを何度もくり返したほうが力がつきます。
やらないことを決めると、やるべきことがはっきりし、迷いが減ります。迷う時間が減れば、その分、勉強に集中できる時間が増えます。
戦略5:小さな勝利を積み重ねる
局地戦で勝ちを重ねていけば、全体の戦況も変わっていきます。受験勉強でも、「この単元は完璧にした」「この分野の過去問は8割取れるようになった」と、小さな勝利を一つずつ積み重ねていくことが大切です。
小さな勝利は自信につながり、次の分野に取り組む意欲にもなります。戦略を立てる流れを表にまとめたので、実際に書き出してみてください。
ステップ | やること | 書き出す例 |
|---|---|---|
| 1. 相手を決める | 第1志望校・学部を決める | 〇〇大学 経済学部 |
| 2. 戦場を知る | 入試科目・配点・出題傾向を調べる | 英語200点、国語100点、日本史100点 |
| 3. 目標点を決める | 合格最低点から科目ごとの目標点を逆算する | 合格最低点6割→英語140点、国語60点、日本史65点 |
| 4. 集中する場所を決める | 配点が高く、伸びしろのある分野を優先する | 英語の長文読解を最優先にする |
| 5. やらないことを決める | 優先度の低い分野・教材を後回しにする | 問題集は1冊にしぼって繰り返す |
勉強計画全体の立て方については、勉強計画の立て方も参考にしてください。
兵力(学習時間)そのものを増やす工夫
弱者の戦略は「集中」が基本ですが、使える兵力そのものを増やすことができれば、さらに有利に戦えます。受験における兵力である学習時間を増やす工夫を紹介します。
すきま時間を「小さな局地戦」に使う
通学の電車やバスの中、授業の合間、寝る前の10分など、1日の中には意外と多くのすきま時間があります。まとまった時間がとれないと嘆くよりも、すきま時間を英単語や一問一答などの「小さな局地戦」に使いましょう。
1回10分でも、1日に3回あれば30分、1か月で約15時間になります。こうした積み重ねが、ライバルとの差を少しずつ縮めていきます。
学習時間を記録して「見える化」する
自分が実際にどれだけ勉強しているのかは、記録しないと意外と分からないものです。毎日の学習時間を記録すると、「思ったより勉強できていない時間帯」や「スマホに使っている時間」が見えてきます。
見える化した時間を、どこに配分するかを考えることも、立派な戦略です。記録のつけ方は、ライバル設定で勉強のやる気を伸ばす方法でも紹介しています。
高校生の定期テストにも使える「弱者の戦略」
ランチェスター戦略の考え方は、受験だけでなく、高校の定期テスト対策にも生かすことができます。
範囲が広いテストほど「局地戦」で攻める
高校の定期テストは科目数が多く、範囲も広くなりがちです。すべてを完璧にしようとすると、時間が足りなくなってしまいます。まずは、配点の高い問題や、授業で先生が強調していたポイント、提出物から出題されやすい問題など、点数につながりやすい部分に集中しましょう。
苦手な科目は、全範囲を薄く復習するよりも、得点しやすい単元にしぼって確実に点を取るほうが、結果につながりやすくなります。
推薦入試を考えるなら、定期テストも大切な「戦場」
ただし、学校推薦型選抜や総合型選抜を考えている場合は、定期テストの成績(評定)が合否に大きく関わります。この場合、定期テストは「やらないこと」ではなく、第1志望に向けた重要な戦場の一つです。
どの入試方式で受験するかによって、兵力を集中させるべき場所は変わります。自分が目指す入試方式を早めに確認し、それに合わせて戦略を立てることが大切です。
戦略を立てるときの注意点
弱者の戦略は強力ですが、使い方を誤ると逆効果になることもあります。次の2点に気をつけましょう。
「集中」と「何もしない」は違う
集中するというのは、優先順位をつけることであって、他のことをまったくやらないという意味ではありません。たとえば、苦手科目でも入試に必要なら、基礎問題で確実に点を取れるようにしておく必要があります。「捨てる」のではなく、「最低限で済ませる」という考え方を持ちましょう。
戦略は定期的に見直す
模試の結果や過去問の出来によって、得意・不得意や伸びている分野は変わっていきます。一度立てた戦略にこだわりすぎず、1〜2か月に一度は見直して、兵力を集中させる場所を調整しましょう。
保護者ができるサポート
お子さまが「全部頑張らなければ」と抱え込んでいるときは、一緒に優先順位を整理してあげることが大きな助けになります。「今いちばん大切なことは何?」「それに使える時間はどれくらいある?」と問いかけ、お子さま自身が戦略を考えるきっかけを作ってあげてください。
また、志望校の入試科目や配点、入試方式などの情報を一緒に調べることも、保護者ができるサポートの一つです。戦う相手のことを正しく知ることが、戦略づくりの第一歩になります。
よくある質問
受験のために部活をやめたほうがいいですか?
必ずしもやめる必要はありません。部活を続けることで気分転換になったり、生活のリズムが整ったりすることもあります。大切なのは、部活の時間を前提に、残りの学習時間をどこに集中させるかを考えることです。引退時期や大会の日程も踏まえて、戦略を立てましょう。
苦手科目は捨ててもいいですか?
入試に必要な科目であれば、完全に捨てるのはおすすめしません。苦手科目は、基礎的な問題や頻出分野にしぼって、最低限の点数を確保することを目指しましょう。その分、得意科目や配点の高い科目に時間を集中させることで、合計点で合格最低点を超えることを目指します。
高校受験を控えた中学生にも使えますか?
使えます。高校受験でも、志望校の入試科目や配点、内申点の比重を調べ、自分がどこで点を取るべきかを考えることが大切です。特に内申点が重視される地域では、定期テストも重要な戦場になります。
自分に合った受験戦略を一人で立てるのが難しいときは、専門家に相談するのも一つの方法です。坪田塾では、講師が一人ひとりの学力や志望校に合わせて、合格までの戦略を一緒に考えます。自宅から指導を受けられるオンライン校もあります。
まとめ:「弱者の法則」で、限られた時間を志望校に集中させよう
ランチェスター戦略の考え方は、受験勉強にもそのまま生かすことができます。最後に、ポイントをおさらいしましょう。
・ランチェスター戦略の「弱者」とは、1位以外の全員のこと。受験生のほとんどは弱者の立場にいる
・受験における兵力は「学習時間」。全部を頑張る「強者の戦略」は危険
・第1志望校を決め、配点・出題傾向・合格最低点から「戦う場所」をしぼる
・「やらないこと」を決め、小さな勝利を積み重ねる
限られた学習時間を、できるだけ第1志望校の対策に集中させること。それが、弱者が強者に勝つための戦略です。まずは今日、第1志望校の入試科目と配点を調べるところから始めてみてください。
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