『体調を崩して現役合格をあきらめた私が、坪田塾で1浪して、慶應義塾大学に合格した話。』

尾﨑愛さん

慶應義塾大学 文学部

羽賀大輔先生

坪田塾 戸越校 校長

「まさに私のための塾だと思った」と話すのは、卒塾生の尾﨑愛さん。高校3年生から坪田塾戸越校で学び始め、1浪を経て慶應義塾大学に合格しました。

ニコニコとした笑顔が印象的で、明るく穏やかな雰囲気の中にも一本筋の通った強さを感じさせる愛さん。

そんな愛さんは現在、長年の夢だった心理学を学ぶ大学2年生。勉学に励むかたわら積極的に旅行に行き、知らない土地の景色や文化に触れているそうです。

高校3年生の冬、愛さんは病気の影響で現役での受験を諦めるという決断をしました。そこから坪田塾での浪人生活を経て、見事、一年後に慶應義塾大学に合格。そんな彼女の、大学合格までの軌跡を、愛さんの担当講師を務めていた羽賀校長と共に振り返ります。

 

中2~高3は、病気の影響で学校にほとんど通えなかった

「やりたいことがたくさんあるのに何から始めていいのかわからず、課題を先延ばしにしてしまうタイプでした。あまりきちんと勉強していませんでしたね」と、愛さんは高校時代の自分を振り返りますが、勉強に注力できなかった一番の要因は、中学3年生の時に発症した、とある病気でした。

「自律神経系の病気にかかってしまったんです。それから高校2年生までの間は、ほとんど学校に行けませんでした」

学校に通える月と通えない月が交互に訪れ、次第に学校の進度に遅れをとるように。苦手な歴史と数学はもちろん、得意だったはずの英語と国語も、登校できなかった期間に進んだ範囲がまったくわからなくなってしまいました。

そうした中、高校3年生になり、学校で進路面談がおこなわれます。

「中学生の頃から大学で心理学を学びたいと思っていました。文学が好きだったこともあり、担任の先生から『文学部の中にある心理学科がいいんじゃないか』とアドバイスをいただき、その方向で志望校を絞っていきました」

 

さまざまなタイミングが重なり、「ここしかない」と入塾を決意

志望校を決めたものの、なかなか学校に通えず、受験への不安が消えない日々が続いていた高校3年生のある日。

坪田塾の戸越校が新規開校するという内容の広告が、愛さんの目に飛び込んできました。

「受験に向けて夏期講習を受けようと思い始めて。ただ体調が安定していなかったので、ガツガツと通うスタイルの塾は難しいなと感じていました。自分のペースで通える良い塾はないかなと探していたところ、たまたまその広告を見つけたんです」

映画「ビリギャル」を観たことがあった点、家から近く塾に通いやすい点、スケジュールの融通が利きやすい点など、さまざまな条件が重なり、愛さんは「私のための塾だ!」と心を揺り動かされます。そして、広告を見て間もなく、戸越校の入塾説明会に申し込みました。

「定期的に通い続ける自信がなかったので、最初は夏期講習だけ受けようと考えていたんです。学習方針だけ学んで、あとは自宅で勉強しようと思って。でも『反転学習』のお話を聞き、やっぱり自分に一番合っている塾だなと感じてそのまま入塾することにしました」

「反転学習」とは、知識をインプットするだけにとどまらず、アウトプットするところまで重視する学習方法です。その学習効率の高さは科学的に証明されており、坪田塾でもこの学習方法を取り入れています。一般的な塾や学校の学習方法は、授業で知識をインプットし、学んだ知識を自宅での宿題や問題演習でアウトプットするというスタイル。しかし坪田塾では逆に、まず自宅での予習によって知識をインプットし、塾ではチェックテストや講師とのディスカッションを通じて予習してきた知識をアウトプット、それにより知識の定着度を確認するという学習スタイルを実践しています。

「インプットはそれなりにできている自信がありました。でも、授業を受けて理解したつもりが、いざテストになると覚えたはずの知識がぱっと出てこなかったり、後日振り返ると何も覚えていなかったりするのが悩みで。それを先生方からズバリと言い当てられるような学習方針に衝撃を受けて、心が惹かれました」

そんな愛さんの担当講師として、主に英語を指導していた羽賀先生は第一印象をこう語ります。

「インプットとアウトプットもそうですが、自分はこれが得意でこれが苦手だと、自分自身を客観的に分析できている様子が話の端々からうかがえましたね。自分を俯瞰して見るのは大人でも難しいのですが、愛さんの場合は自己分析した結果がほぼ当たっている。この若さで自分をしっかり客観視できているのは、シンプルにすごいと思いました」

こうして夏期講習のタイミングで坪田塾に入塾し、羽賀先生と共に受験勉強をスタートしました。

 

体調に応じたサポートで無理なく学習

順調に夏期講習の通塾を終えた愛さんはその後、週2回×3時間のペースで坪田塾に通い始めます。ところが秋になり、気温が下がってくると、体調が優れず通塾できない日が徐々に増えてきました。

そうした中で、羽賀先生は「体調を考慮して、1か月の通塾可能時間数の中で、曜日や時間に関係なく、塾に来られる日に来てもらう」という特別な対応を取ることにしました。坪田塾では生徒1人ひとりに寄り添った“子”別指導を実践しており、講師陣は常に、その子にとってベストな対応を考えながら、日々の塾生の学習に伴走しています。「体調がいい日は通塾日以外でも来てもらって構わない、とするのが尾﨑さんにとって最もいい方法ではないか」と羽賀先生は考えたそうです。

その方針にのっとり、愛さんは体調が悪くて通塾できない時期は、自宅で学習を進めました。愛さんの中には取り組みやすいと感じる教材と、ハードルが高いと感じる教材があったのだとか。そこで、体調が優れない日には、完全に勉強をやめてしまうのではなく、「せめて取り組みやすいものだけでも毎日やろうと決めていた」といいます。

その中でも特に取り組みやすかったのが、英語の和訳です。自宅で『基礎英文問題精構』という和訳のテキストをコツコツと進めた愛さん。自宅で予習をして、塾でチェックテストを受けるという学習スタイルの坪田塾において、一度の通塾前におこなう予習の量は、チェックテスト2~3回分程度が平均的です。ですが、愛さんは1カ月ぶりに通塾した際に、なんとチェックテスト20回分の予習を提出してくれたのです。

「このテキストはかなりハードルが高くて、多くの生徒がつまずく鬼門的な存在なんですよ。それを1日に20回分も出してくれた。正直、採点にめちゃくちゃ時間がかかるので嬉し泣き状態です(笑)。でも、せっかく1カ月ぶりに来てくれたのだからと私も頑張りました。その年で1番集中したんじゃないかな」と羽賀先生は笑顔で当時を振り返ります。

羽賀先生が取り組んでいた、愛さん向けの“子”別指導は、体調やスケジュール面だけではありません。

坪田塾では、学習指導に心理学を応用しており、一人ひとりの性格に合わせた声掛けやコミュニケーションを通じて、生徒たちの学習を支えています。そのため、入塾時には、9つの性格タイプに分類する「性格診断テスト」を実施しています。

愛さんは「芸術家」「研究者」「堅実家」「調停者」の4タイプに当てはまっていました。1つのタイプが突出する生徒がほとんどで、4つが同率1位というのは非常に珍しいことです。

4つのタイプを意識しながら指導するのは難しいため、羽賀先生は愛さんと接しながら特に高い要素を慎重に見極めようとしました。そして、とりわけ「研究者」と「堅実家」の要素が強く出ていると感じたそうです。

「研究者タイプは、興味を持ったことに没頭し、とことん突き詰めていくのが得意なタイプ。1人で勉強をどんどん進められるところは大学受験において非常に強みになります。その力を生かしつつ、進む方向だけ間違えないように調整する。そんな関わり方を意識していました。

一方堅実家タイプは、コツコツと作業を進めるのが得意なタイプ。着実にゴールに近づいているのが実感できると、安心して俄然やる気が出やすい傾向があります。以上の2点を踏まえて、一緒に細かく進捗を確認しつつ、確実に前進していると実感できるようにすることで、研究者×堅実家という、愛さんの長所を生かせるように心がけていました」と羽賀先生。

「取り組みやすいものだけでも毎日やろう」と決めて実践した英文和訳のエピソードからも、愛さんが「研究者×堅実家」の特徴を持っていることがうかがえます。

 

病気のため受験を諦め、1年後の合格を目指す

体調のいい日は塾に通いつつ、自宅での学習をコツコツと続けた愛さんですが、高校3年生の10月頃に大きな決断をします。

「現役生として受験することを諦めました。出願の期日までに証明写真を撮りに行けなかったんです。今思えば、そもそも勉強が間に合っていないので受けたくない気持ちもあって、ネットで『受験 間に合わない 浪人』と検索していました。そこに共感を求めていたんです。でも、現役で頑張れないなら浪人も無理だという意見が多くて。確かにそうだよねと落ち込みつつ、今の状態では受験なんてできないと心の中で反論したりして、すごく葛藤したことを覚えています」

しかし愛さんはすぐに気持ちを切り替え、1年後の合格を目指すことにしました。スケジュールの柔軟な対応はもちろん、坪田塾の学習スタイルが一貫して自分に合っていたことから、愛さんは「浪人してもこのまま坪田塾で勉強しようと最初から決めていた」といいます。

浪人を決めた数日後に、塾にやってきた愛さん。そのときの様子を羽賀先生はこう語ります。

「塾で愛さんと今後の方針について話したのですが、落ち込む様子もなくいつも通りでビックリしましたね。これから1年頑張れそうかと聞けば、『頑張ります!』と前向きな即答で。この様子であれば、1年後にはいい結果が出るに違いないと感じました。」

そうして愛さんは、浪人生としての生活を新たな気持ちでスタートしました。

「睡眠はきちんと取るように意識していました。日付が変わる前には寝て、8〜9時には起きる。教科書に目を通す、英単語を1100個覚えるといった、最低限必ずやることを決めていました」と、愛さん。

「これをやろうと自分で決め、きちんと実行するのは簡単なことではありません。これができたのは、愛さんの性格タイプが大きく影響しています。」羽賀先生はこう説明してくれました。

「自分の課題を自分できちんと分析できるので、やることが間違っていなければ、何をするかは基本的に愛さんにお任せしていました。堅実家タイプは曖昧な状況に不安を感じやすく、研究者タイプは集中しているときに途中で口を挟まれるのを嫌う一面があります」

「ですから、最初に『英語はこのテキストを使います』『まずはここを見てください』などと具体的に説明し、そのあとは愛さんの『ここを強化したい』『こうやって勉強したい』という考えに一任していた形です。直したほうがいいと思うポイントが出てきたときにだけ『こうしたほうがいいよ』と説明し、自然に軌道修正するようにしていました」

また通塾できない時期には定期的に連絡し、何かしらの接点を持ち続けるように意識していたそうです。「勉強に関しては、あれこれ言わなくても自分で進めてくれると信頼していましたから、どちらかというと勉強以外の精神面をサポートできるように心がけていました。愛さんに寄り添って伴走するイメージですね」と、羽賀先生。

 

急に英語が読めなくなった!過去問を解き焦る日々

体調が少しずつ回復し、受験期終盤にはほぼ毎日塾に通えるようになった愛さんですが、何度か不安や焦りを感じた時期がありました。それは共通テスト1カ月前のこと。

「過去問や模試を解くと、英語のリスニングがよくても70点ほどしか取れなくて。リスニングのせいで成績がガクッと落ちているんじゃないかなと思うほどでした」

愛さんは羽賀先生に「どうしてもリスニングの成績が上がらない」と打ち明け、対処法を相談しました。相談を受けた羽賀先生は、おすすめのリスニングアプリを愛さんに教えたそうです。

「教えてもらった日から早速アプリを使い始めました。あわせて毎日必ずリスニングの過去問を1回解いてから寝るようにしていたら、2週間で急に90点台を取れるようになったんです」と、愛さん。

「リスニングが苦手な原因はさまざまですが、『こうしたら成績が伸びる』というセオリーが私の中にあります。愛さんにもそれが当てはまるだろうと思い、アプリをすすめました。とはいえ、ものすごい勢いでリスニング力が伸びたので、そのスピードには驚かされました」と羽賀先生は語ります。

こうしてリスニングの点数が飛躍的に伸び、共通テスト本番では自己ベストの99点を獲得。この影響は非常に大きく、共通テスト利用で多くの大学に合格することができました。

共通テストが終わり、いよいよ本命を含む私大の入試が始まります。このまま順調に進むかと思われましたが、2月に入って突然のトラブルが愛さんを襲いました。

「急に英語が読めなくなっちゃって。簡単な単語も意味がわからなくなるときがあって、すごく焦りました」

塾で羽賀先生に相談すると、いつも通り「こういうところができているから大丈夫だよ」「次はこうしてみよう」と的確にアドバイスしてくれたといいます。

愛さんはいつもと変わらぬ羽賀先生の対応に「私もいつも通りやろう」と決め、できていない部分を片っ端から勉強するうちに、自然と英語が読めなくなるトラブルからも抜け出すことができました。

羽賀先生は当時をこう振り返ります。

「愛さんに限らず、入試直前の時期に不安になる生徒さんはたくさんいます。『合格できなかったらどうしよう』『もう1年やる羽目になったらどうしよう』とネガティブに考えてしまうのは自然なことですし、ある意味、頑張ってきたことの証でもあります。ですから、『こういうところができているよ』と、自分1人では目が届きづらい部分にスポットライトを当てて、プラスの声掛けをするようにしています」

また、「解き始めの最初のうち、過去問に苦戦するのは通過儀礼のようなものです。過去問は解いた分だけ成績が伸びていくので、愛さんの成績はまだまだ上がると確信していました」と当時の心境を語ってくれました。

 

「こんなヒヤヒヤな毎日、早く終わらせたい!」その一心で挑んだ受験当日

英語のスランプを抜け出したと思ったら、今度は“目”にトラブルが。

「私大入試の過去問を解いていたら、急に目が見えづらくなっちゃって」と話す愛さん。過去問を近くで見すぎていたためか、すぐ近くのコンビニの看板もぼやけて見える状態になってしまったそう。

「試験当日も、黒板に何て書いてあるのか見えなくて不安でした。でも逆にそれがモチベーションになったんです。こんなヒヤヒヤな毎日を早く終わらせて、たくさん旅行して目を治すぞって、燃えながら試験を受けました」

にこやかに話す愛さんを見て、羽賀先生も「その話は初めて聞いた!」と驚くばかり。

試験が終わり、あとは神のみぞ知るの心境だった愛さんは、旅行に出かけたり映画を見たりして合格発表の日を待ちます。

「慶應義塾大学の文学部に合格しました。家で合格を知ったので、自室にいる父に結果を伝えるとすごく喜んでくれて。ハグしながら『愛ちゃん、よかったね!』と言ってくれて、嬉しさが込み上げてきましたね」

羽賀先生にもLINEで合格を報告。

「『慶應義塾大学に合格しました』って、滑り止めの大学に合格したときと同じようなテンションで教えてくれまして。こちらは『すげぇ!!!』と大喜びしたわけですよ(笑)。テンションにツッコミ入れつつも、現役生のときから病気で通塾も受験もできなかった姿を見てきましたし、それを自分の力で乗り越えて、無事に受験が終わったことに最大の安堵感を覚えました」と、羽賀先生は嬉しそうな表情で話します。

 

やりたいことに向かってやるべきことをやる。受験勉強は自己実現の1つだった

約1年半の間、坪田塾で過ごした愛さん。受験を振り返ってみての感想を聞くと「私としては自己実現の1つだったなと思います」と答えてくれました。

「どんな夢においても、やりたいことに向かってやるべきことをやるって、なかなか実行できることではないと思うんです。でも受験はそれを自然と実行できるいい機会だったなと。自分がどんどん成長していくのを数字でも体でも実感できるのは、受験勉強ならではなのかもしれませんね」

また「坪田塾のような、学校以外に安心できる場所があったのは、とてもありがたかったです。学校と家族だけだったら、もっと視野が狭まって心も塞いでいたと思います」と、坪田塾の存在が大きかったことも教えてくれました。

今は大学で心理学の勉強に励みながら、自分のやりたいことをやる、そんな生活を楽しんでいるそう。「小説も読みたいし映画も観たい。旅行もしたいし楽器も始めたいといった感じで、やりたいことが本当にたくさんあって。だから自分のやりたいことにきちんと挑戦できる大学生活にしたいですね」と、愛さん。

また、現在は通塾していた戸越校で、後輩受験生の指導もおこなっています。卒塾でお別れを伝えにきた際、坪田塾で働きたいとお願いするつもりだったのだとか。

「坪田塾で勉強した経験を生かしたい、ここで働きたいという気持ちが、在塾時からずっとありました」と話す愛さん。

「実は、私達からも、アルバイトとして働いてくれないかと打診する予定だったんです。でもそれを口にする前に、愛さんのほうから今すぐ働きたい!と前のめりに伝えてくれて。あれはビックリしたよね」と、羽賀先生も当時を回想。

懐かしくも楽しそうな2人の様子に、卒塾してからも良好な関係を築いていることがうかがえます。

最後に、愛さんに受験生へのメッセージを聞いてみました。

「受験の途中で『もう遅いかもしれない』と諦めそうになる瞬間があると思います。私も数か月前や数週間前の時点でもう遅いと感じて悔やんだことがありましたが、受験直前に振り返ってみれば全く遅くありませんでした。何も遅いことはないので、安心してぎりぎりまで挑戦してほしいです。決して焦らず、坪田塾の先生と一緒にやるべきことを最後まで突き詰めていってくださいね」

 

講師コメント

羽賀大輔 戸越校校長

愛さんは、坪田塾の基本である「自宅でインプット、塾でアウトプット」を忠実に実行する、模範ともいえる存在でした。

慶應義塾大学に合格したと聞いたときは、受験を無事に終えられた安堵感と、最後まで塾に通ってくれたことへの感謝など、さまざまな感情が湧き上がったことを覚えています。病気の影響で自分がやりたいことがなかなかできず、今までたくさんの苦労を経験されてきたと思います。愛さんの紆余曲折を1年半ほど間近で見てきたので、これからは自分のやりたいことを我慢せず、人生を大いに、目いっぱい楽しんでもらいたいです。