
受験が近づくと、子どもの様子が気になって「大丈夫?」「間に合うの?」と声をかけたくなるものです。しかし、その心配の言葉が、かえって受験生を不安にさせているかもしれません。
受験生に必要なのは、「大丈夫?」と確かめる言葉ではなく、「大丈夫!」と背中を押してくれる安心感です。
本記事では、厚生労働省の調査データから、中学生が抱える悩みや不安と、その相談相手を紹介します。そのうえで、「大丈夫?」が受験生を不安にさせてしまう理由と、それに代わる言い換え例、入試直前から本番当日までの声かけのポイント、受験生自身が「大丈夫!」と思えるためのコツを解説します。
執筆:坪田塾 オンライン校 校長 田形佳紀
目次(クリックで開閉)
・受験生は何に悩んでいる?データで見る子どもの不安
┗中学2年生の約4割が「悩みや不安がある」
┗悩みの相談相手は「お母さん」が最多
┗「大丈夫?」が受験生を不安にさせる理由
・「大丈夫?」より「大丈夫!」が受験生の力になる
┗心配の言葉は「信頼していない」と伝わることがある
┗安心感が「平常心」を支える
・受験生への声かけ|NGワードの言い換え例
・受験生を安心させる声かけ・接し方
┗結果ではなく「努力」を認める言葉
┗体調を気遣う言葉
┗あえて「いつもどおり」に接する
・高校受験と大学受験で変わる声かけのポイント
┗高校受験(中学生):一緒に予定を確認し、安心できる環境を整える
┗大学受験(高校生):本人の判断を尊重し、見守る
・時期別|入試直前から本番当日までの声かけ
・保護者自身の不安との付き合い方
・受験生のみなさんへ:自分で「大丈夫!」と思えるために
┗「やってきたこと」を見える化する
┗本番は「いつもどおり」の行動で臨む
┗不安なときは、言葉にして相談する
・よくある質問
┗つい「大丈夫?」と言ってしまいます。どうすればいいですか?
┗子どもが受験について何も話してくれません
┗受験本番当日の朝は、どんな言葉をかければいいですか?
・まとめ:「大丈夫?」ではなく「大丈夫!」で送り出そう
受験生は何に悩んでいる?データで見る子どもの不安
保護者としては励ましや気づかいのつもりでも、子どもはその言葉をどう受け止めているのでしょうか。まずは、国の調査データから、子どもたちがどんなことに悩み、だれに相談しているのかを見てみましょう。
中学2年生の約4割が「悩みや不安がある」
厚生労働省が2025年5月に公表した「21世紀出生児縦断調査」では、2010年に生まれた子どもたちを毎年追跡して調査しています。中学2年生(14歳)になった第14回調査では、「悩みや不安がある」と答えた子どもが40.2%でした。中学1年生のときの33.5%から増えており、学年が上がるにつれて悩みを抱える子どもが多くなっていることが分かります。
特に深い悩みや強い不安の内容を見ると、1位は「学校や塾の成績に関すること」(22.7%)、2位は「進路に関すること」(16.0%)でした。受験を控えた子どもたちにとって、成績や進路は最も大きな心配ごとなのです。

(出所:厚生労働省「第14回21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)の概況」. 2025年5月13日公表.)
悩みの相談相手は「お母さん」が最多
同じ調査で、悩みや不安がある子どもに相談相手を聞いたところ、最も多かったのは「お母さん」(65.0%)でした。次いで「友人」(51.9%)、「お父さん」(28.3%)と続き、保護者が子どもにとって大切な相談相手であることが分かります。一方で、「誰にも相談しない」と答えた子どもも14.0%いました。
つまり、保護者の一言は、子どもの気持ちに大きな影響を与えます。成績や進路に不安を抱えている子どもにとって、身近な保護者の言葉が安心につながることもあれば、かえって不安を大きくしてしまうこともあるのです。
「大丈夫?」が受験生を不安にさせる理由
受験生は、だれよりも自分自身が「このままで大丈夫だろうか」と不安を感じています。そこに保護者から「大丈夫?」と聞かれると、「やっぱり大丈夫じゃないように見えているのかな」と、不安がさらに大きくなってしまいます。
また、「大丈夫?」という問いかけは、受け取り方によっては「これまでの努力を信じてもらえていない」というメッセージにもなります。せっかく相談相手として頼りにしている保護者から心配の言葉ばかりをかけられると、子どもは本音を話しにくくなり、「誰にも相談しない」状態につながってしまうおそれもあります。
「大丈夫?」より「大丈夫!」が受験生の力になる
私自身も心配性な性格なので、受験生から「このままで大丈夫ですか?」と相談されると、その不安な気持ちがよく分かります。だからこそ入試直前期には、あえて「大丈夫?」という言葉を口に出さないようにしています。
心配の言葉は「信頼していない」と伝わることがある
ここまで一生懸命頑張ってきた受験生にとって、入試直前の「大丈夫?」は、急に突き放されたように感じられることがあります。「信頼していたのに、本当は心配されていたんだ」と受け取られてしまうと、自信が揺らぎ、本来の力を出しにくくなってしまいます。
大切なのは、心配する気持ちを「疑問の形」で伝えないことです。同じ思いでも、「ここまでよく頑張ってきたね」「あなたなら大丈夫」と言い切る形に変えるだけで、受験生が受け取るメッセージは大きく変わります。
安心感が「平常心」を支える
入試直前の受験生は、とても繊細です。小さな一言で気持ちが大きく揺れ動きます。その繊細さを大らかに受け止め、「いつもどおりで大丈夫」という安心感を与えることが、周りの大人ができる最大のサポートだと私は考えています。
受験本番で大切なのは、「平常心」です。家庭で安心して過ごせることが、本番でいつもどおりの力を発揮するための土台になります。
受験生への声かけ|NGワードの言い換え例
つい言ってしまいがちな言葉を、受験生を安心させる言葉に言い換えた例を表にまとめました。ポイントは、「疑問形で確かめる」のではなく、「認める」「信じる」言葉にすることです。
| 場面 | 言いがちな言葉(NG) | 言い換え例(OK) |
|---|---|---|
| 勉強の様子が気になるとき | そんなペースで大丈夫? | 毎日コツコツ続けているね |
| 休憩しているとき | 勉強しなくて大丈夫? | ひと息ついたら、また頑張ろうね |
| 模試の結果が悪かったとき | このままで受かるの? | 本番までに伸びるところが見つかったね |
| 友だちの話が出たとき | 〇〇さんはもっと頑張ってるよ | あなたのやり方で大丈夫だよ |
| 入試直前 | 絶対に合格してね | ここまでやってきたんだから大丈夫! |
言い換えの言葉は、無理に毎日かける必要はありません。大切なのは、「あなたの頑張りを見ているよ」「信じているよ」という気持ちが伝わることです。
受験生を安心させる声かけ・接し方
では、受験生を安心させるには、どのような声かけや接し方がよいのでしょうか。ポイントを3つ紹介します。
結果ではなく「努力」を認める言葉
受験生がうれしく感じやすいのは、「合格してね」という結果を求める言葉よりも、「毎日頑張っているね」「よく続けているね」という努力を認める言葉です。結果がどうであれ、ここまで頑張ってきた過程を見てくれていると感じられることが、受験生の自信につながります。
体調を気遣う言葉
「最近寒いから、温かくして寝てね」「夜食を用意しておいたよ」など、体調を気遣う言葉も受験生の支えになります。勉強のことには直接触れずに、生活面からそっと支えることで、受験生は「応援されている」と感じられます。
あえて「いつもどおり」に接する
受験が近づくと、「何か特別な言葉をかけなければ」と考えてしまう保護者の方も多いでしょう。しかし、受験生にとっては、いつもどおりの会話や食卓こそが一番の安心材料になることもあります。
受験の話ばかりにならないよう、テレビの話題や今日あった出来事など、何気ない会話を大切にしてみてください。ときには冗談を言い合って笑うことも、緊張をほぐす良いきっかけになります。
高校受験と大学受験で変わる声かけのポイント
声かけの基本は同じですが、高校受験と大学受験では、子どもの年齢や受験の仕組みが異なるため、意識したいポイントも少し変わります。
高校受験(中学生):一緒に予定を確認し、安心できる環境を整える
中学生にとって、高校受験は初めての本格的な受験であることがほとんどです。先が見えない不安が大きいため、「何をいつまでにやればいいのか」を一緒に整理してあげることが安心につながります。
願書の提出や受験票の準備、当日の持ち物など、手続きや準備は保護者がしっかりサポートしてあげましょう。そのうえで、勉強の中身については「あなたのペースで大丈夫」と任せる姿勢が大切です。
大学受験(高校生):本人の判断を尊重し、見守る
高校生になると、受験する大学や勉強の進め方を自分で決めたいという気持ちが強くなります。保護者があれこれ口を出すと、「信頼されていない」と感じさせてしまうこともあります。
大学受験では、共通テストから私立・国公立の個別試験まで、長い期間にわたって試験が続きます。一つひとつの試験の結果に一喜一憂せず、「最後までやりきれば大丈夫」と、長い目で見守ってあげましょう。
時期別|入試直前から本番当日までの声かけ
入試直前から本番当日までは、受験生の緊張が特に高まる時期です。時期ごとの声かけと、家庭でできることの例を表にまとめました。
| 時期 | 声かけの例 | 家庭でできること |
|---|---|---|
| 入試1か月前 | 体調が一番大事だから、無理しすぎないでね | 睡眠・食事のリズムを整える |
| 入試1週間前 | ここまで本当によく頑張ってきたね | 受験票や持ち物を一緒に確認する |
| 入試前日 | 今日は早めに休もうね | いつもどおりの夕食で過ごす |
| 本番当日の朝 | いってらっしゃい、大丈夫! | 笑顔で送り出す |
| 試験から帰ってきたとき | お疲れさま、よく頑張ったね | 結果や出来を根掘り葉掘り聞かない |
本番当日は、保護者も緊張するものです。しかし、保護者の不安は子どもにも伝わります。当日の朝は、深呼吸をして、笑顔で「大丈夫!」と送り出してあげてください。
保護者自身の不安との付き合い方
受験期に不安を感じているのは、受験生だけではありません。保護者の方も、「このままで大丈夫だろうか」と心配になるのは自然なことです。
大切なのは、その不安を子どもにそのままぶつけないことです。不安なときは、学校や塾の先生に相談して、客観的な状況を確認してみましょう。プロの目から見た意見を聞くことで、保護者自身が安心でき、子どもにも落ち着いて接することができます。
また、受験期でも保護者自身の時間や楽しみを大切にしてください。保護者がゆったりと構えていることが、子どもにとって何よりの安心材料になります。
受験生のみなさんへ:自分で「大丈夫!」と思えるために
ここからは、受験生のみなさんに向けたメッセージです。周りの声かけも大切ですが、最後に自分を支えるのは、「ここまでやったんだから大丈夫!」と思える自分自身の気持ちです。
「やってきたこと」を見える化する
不安になるのは、自分が積み重ねてきたことが見えにくいからです。解いた問題集の冊数、勉強した時間、覚えた単語の数など、これまでの努力を記録して、目に見える形にしておきましょう。
入試直前に不安になったときは、その記録を見返してみてください。「こんなにやってきたんだ」と実感できれば、自然と「大丈夫!」と思えるはずです。
本番は「いつもどおり」の行動で臨む
本番当日は、いつもと違うことをしないのが鉄則です。実は私自身、試験本番の直前に、人生で初めておしゃれなカフェでコーヒーを飲み、お腹を壊したまま試験を受けたという苦い経験があります。
朝ごはんのメニュー、起きる時間、会場での過ごし方など、できるだけ普段どおりにすることが、平常心を保つコツです。本番と同じ時間に起きて勉強する習慣を、直前期から作っておきましょう。
不安なときは、言葉にして相談する
不安な気持ちを一人で抱え込むと、どんどん大きくなってしまいます。「このままで大丈夫かな」と思ったら、信頼できる先生や家族に話してみましょう。言葉にするだけで気持ちが整理され、やるべきことが見えてくることもあります。
周りの人に「大丈夫?」と聞かれてつらいときは、「心配してくれてありがとう。でも、いつもどおり見守ってくれるとうれしい」と伝えてみるのも一つの方法です。
よくある質問
つい「大丈夫?」と言ってしまいます。どうすればいいですか?
心配になるのは、お子さまを大切に思っているからこそです。言ってしまったときは、「あなたなら大丈夫だと思ってるよ」と言い切る形で付け足してみましょう。最初から完璧を目指さず、疑問形を少しずつ減らしていくことを意識してみてください。
子どもが受験について何も話してくれません
受験期の子どもが口数少なくなるのは、珍しいことではありません。無理に聞き出そうとせず、食事や体調など、勉強以外の話題で普段どおりに接しましょう。子どもが話したくなったときに、いつでも話を聞ける雰囲気を作っておくことが大切です。
受験本番当日の朝は、どんな言葉をかければいいですか?
長い励ましよりも、「いってらっしゃい」「大丈夫!」といった短い言葉で、笑顔で送り出すのがおすすめです。「忘れ物はない?」と何度も確認すると不安をあおってしまうので、持ち物の確認は前日までに済ませておきましょう。
受験期の声かけや勉強の進め方に悩んだときは、専門家に相談するのも一つの方法です。坪田塾では、講師が一人ひとりの性格に合わせた声かけで、受験生が安心して本番に臨めるようサポートしています。自宅から指導を受けられるオンライン校もあります。
まとめ:「大丈夫?」ではなく「大丈夫!」で送り出そう
入試直前の受験生はとても繊細です。保護者の何気ない「大丈夫?」が、不安を大きくしてしまうこともあります。最後に、ポイントをおさらいしましょう。
・中学2年生の約4割が悩みや不安を抱え、1位は成績、2位は進路に関すること
・悩みの相談相手の最多は「お母さん」。保護者の言葉は子どもに大きな影響を与える
・「大丈夫?」は、努力を信じてもらえていないと受け取られることがある
・疑問形ではなく、努力を認め、信じていることが伝わる言葉を選ぶ
試験本番には、「大丈夫?」ではなく「大丈夫!」と胸を張って送り出してあげてください。そして受験生のみなさんは、「ここまでやったんだから大丈夫!」と思えるよう、一日一日を大切に過ごしていきましょう。
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