大学や学部・学科の選択肢が多すぎて、どう選べばいいか悩む高校生は少なくありません。充実した大学生活を送り、将来の目標を実現するためには、自分に合った大学・学部・学科を選ぶことが重要です。受験勉強に前向きに取り組むためにも、早い段階から大学の情報を集め、自分の興味や将来について深く考えることが大切です。
この記事では、大学選びで失敗しないために重視すべきポイントや情報収集のコツ、主要な学部で学べる内容など、後悔しない大学選びの7つのポイントについて詳しく解説します。
目次(クリックで開閉)
・大学の選び方で重視すべきこと
・大学の選び方のポイントは早めの情報収集
┗志望校はいつまでに決める?
┗同じ学部、学科でも学校ごとの特色を調べるべき
┗文系・理系に区別できない新しい学部、学科も
┗テーマに基づいた総合的な学びができる新しい学部、学科も
・大学選びのために学部の分野を知ろう!
・大学選びのために主な学部、学科で学べることを知ろう!
┗社会についてアプローチをする分野
┗人間や文化についてアプローチをする分野
┗基礎科学・応用科学についてアプローチをする分野
┗生命科学についてアプローチをする分野
・後悔しない大学の選び方7つのポイント
┗1.自分は何に興味があるのかを知る
┗2.10年後、20年後の自分を想像してみる
┗3.自分に合う学び方を選ぶ
┗4.通いやすさや立地について考える
┗5.大学でかかる費用を計算する
┗6.複数のオープンキャンパスに行って比較する
┗7.親や友達の意見に流されない
大学の選び方で重視すべきこと
文部科学省の「令和5年度学校基本調査」によると、日本には810の大学があり、2,708の学部が存在します。近年では、これまでになかった専門性の高い学部や学科が多数創設され、初めて耳にするような分野も珍しくありません。
高校生は、この多種多様な、さまざまな選択肢の中から、自分の希望や学びたいことに合う大学、学部や学科を選ぶ必要がありますが、自分に合った大学を選ぶことのメリットは計り知れません。
文部科学省の「進路を考える時の高校生の気持ち」によると、大学受験を目指す高校生は、以下のような悩みを抱えています。
・自分に合う進路が分からない
・やりたいことが見つからない、分からない
・社会に出る自信がない
・情報収集や選択の方法が分からない
・経済的な不安
・学力不足の懸念(模試などの成績)
このような不安から、「すぐに社会に出るのが怖い」「周りの人が行くから」といった理由で大学進学を決める受験生も多いのが現状です。
しかし、大学での4年間は、その後の人生を大きく左右する重要な期間です。自分の夢や目標を実現できる大学・学部・学科を選ぶことが、その後の人生に大きな影響を及ぼします。受験への不安を軽減し、自分が納得できる大学を選ぶために、まずは幅広く大学の情報を集めることから始めましょう。
大学の選び方のポイントは早めの情報収集
難易度や偏差値ばかりを気にするのではなく、自分に合った大学を見つけるためには、早い段階からの情報収集が欠かせません。新しい情報を多く知ることで、選択肢が増え、将来の可能性も大きく広がります。情報収集のヒントとして、大学のウェブサイトやSNS、先輩の体験談などが挙げられますが、ここでは、情報収集の時期やアドバイスについてお伝えします。
志望校はいつまでに決める?
高校生活では、1年生の秋に文系・理系を選択し、2年生の後半には3年生からの履修科目を決定するのが一般的です。
大学の学部は大きく文系・理系に分かれています。最近では文理両方の要素を持つ学部も増えていますが、学部によって大学入試に必要な科目が異なる点は共通です。
高校で受験に必要な科目を学習できるかどうかは、受験勉強や志望校合格に大きく影響します。そのため、遅くとも高校2年生の夏には第一志望・第二志望の大学をリストアップし、一般選抜か推薦入試なのかを考えておくことが望ましいでしょう。
そのためには、高校1年生のうちから大学選びの情報収集を始め、興味のある学部や学科を見つけておくことが重要です。学部や学科が決まれば、志望大学や併願校、受験科目の絞り込み、共通テストの受験の必要性なども自然と見えてきます。
同じ学部、学科でも学校ごとの特色を調べるべき
同じ名称の学部でも、大学によって学べる内容は異なります。
例えば、工学部でも機械工学や電子工学に強い大学もあれば、環境工学やバイオ工学に力を入れている大学もあります。心理学部でも、実験施設や研究機会が充実している大学がある一方で、心理療法やメンタルヘルスの実践に注力している大学もあります。
入学後に「学びたい内容が違った」というミスマッチを避けるため、大学の公式サイトやパンフレットなどで、学びの特色やカリキュラムが自分の希望と合うかどうかを必ず確認しましょう。
さらに、就職サポート体制の充実度も、大学選びの重要なポイントです。具体的な就職希望企業がある場合は、その大学の卒業生が同じ企業に就職できているかを調べてみるのもおすすめです。
文系・理系に区別できない新しい学部、学科も
大学の学部や学科は年々増加しており、名称だけでは内容を判別しにくい学部や、文系・理系の枠に収まらない新しい系統の学部が次々と誕生しています。文理の垣根を越えた、複合的な学びができる学部の例をいくつか紹介します。
・環境情報学部:最先端のサイエンス・テクノロジー・デザインを通じて社会の未来を創造することを学ぶ
・ヒューマンケア学部:科学的視点から人の心や体について学ぶ
・サステナビリティ学部:持続可能な理想の未来社会や環境をデザイン・実現する方法を学ぶ
・モチベーション行動学部:人間関係や集団心理から、社会で人のやる気を引き出す実践的な方法を学ぶ
このように、AIなどの科学技術の進歩や多様性を重視する社会の変化に伴い、学部や学科の種類は常に進化し続けています。
テーマに基づいた総合的な学びができる新しい学部、学科も
さらに、特定のテーマに基づいて総合的に学べる新しい学部も増えています。
・社会構想学部:社会課題の解決をテーマに、社会システムの設計などを学ぶ
・グローバル教養学部:国際的な視点から社会問題を考察し、グローバルな解決策を提案する力を養う
・環境科学部:気候変動・資源管理・生物多様性などをテーマに、自然科学と社会科学の知識を組み合わせて解決策を探究する
・データサイエンス学部:データ分析に必要な知識をはじめ、コミュニケーション力や発想力・ビジネス力を学ぶ
・AI・ロボティクス学部:ロボット工学、機械学習、データ倫理などをテーマに、人工知能(AI)とロボティクスの技術的・倫理的・社会的側面を学ぶ
仮にいま持っている情報だけでは興味が湧かなかったとしても、新たな分野に心惹かれる可能性はゼロではありません。将来の選択肢を広げるためにも、世の中には今どんな学部が存在し、そこで何が学べるのか、最新の情報を積極的に集めましょう。
大学選びのために学部の分野を知ろう!
大学の学部は、分野を限定せず分野を超えて幅広く学ぶ傾向が強まっていますが、大まかには以下の研究アプローチに分類できます。
・社会に関する研究
・人間や文化に関する研究
・自然界の現象や原理・法則などの科学に関する研究
・生命に関わる科学の研究
これらの基本的な系統に加え、先述した通り、様々な分野を組み合わせた複合的な学びができる学部や、新たに創設された学部も数多く存在しています。
大学選びのために主な学部、学科で学べることを知ろう!
大学の学部選びの情報収集では、新しい分野を知るとともに、主要な学部で学べる内容を理解しておくことも大切です。大まかな系統別に、どんな学部があり、そこで何が学べるのかを紹介します。進路選択の参考にしてください。
社会についてアプローチをする分野
私たちが暮らす社会について研究し、学ぶ分野には、以下のような学部・学科があります。
・法学部:法律について学ぶ
・経済学部:人や物、お金の動きについて学ぶ
・経営学部:企業における経営管理について学ぶ
・商学部:商品の動きから実践的な経済活動を学ぶ
・社会学部:社会の仕組みについて学ぶ
・政治学科:政治の仕組みについて学ぶ
これらの学部では、社会の構造や機能、制度の役割など、社会に関するあらゆる側面を学びます。社会の仕組みを理解したうえで、現代の様々な課題や問題の解決策、より良い社会を実現するための行動について考える分野です。
人間や文化についてアプローチをする分野
人間や文化について考え、学ぶ学部や学科には以下のようなものがあります。
・文学部:文学研究、歴史や思想などの文化活動、人間の行動について学ぶ
・外国語学部:外国語と、その国や地域の歴史・文化について学ぶ
・人文学部:人間と、人間を取り巻く世界について学ぶ
・心理学部:人の心と、人の心に伴う行動について学ぶ
・家政学部:衣・食・住について学ぶ
・教育学部:教育学や教員免許取得のための学問を学ぶ
・芸術学部:様々なクリエイティブ技術について学ぶ
これらの学部では、人間そのものや、人間が築き上げてきた文化について学びます。文学、歴史、心理、教育など、様々な切り口から「人間とは何か」について考える分野です。
基礎科学・応用科学についてアプローチをする分野
自然界の法則や原理などの科学を追究する分野には、以下のような学部・学科があります。
・理学部:地球、宇宙、自然現象における原理・法則といった基礎科学を学ぶ
・工学部:基礎科学における原理・法則に基づき、人間や社会に役立つ物や技術を生み出す応用科学を学ぶ
これらの学部では、高校までに学んできた「理科」の知識をより深く掘り下げ、自然界の実態を理解するとともに、それを社会に役立てる技術や方法を考えます。
生命科学についてアプローチをする分野
人間の生命や生物に関する研究を行う学部や学科には、以下のようなものがあります。
・農学部:農業の勉強や農作物についての研究を行う
・獣医学部:動物の体についての専門的な知識を学ぶ
・畜産学・水産学部:動物や魚の飼育方法や動物についての研究を行う
・医学部:医療の研究や医師になるための知識や技術を学ぶ
・歯学部:歯科医療の研究や歯科医になるための知識や技術を学ぶ
・薬学部:薬・創薬の研究や薬剤師になるための知識や技術を学ぶ
・看護学部:看護師や助産師、保健師になるための知識や技術を学ぶ
これらの学部では、人間の生命に直結する知識や技術について学び、最先端の技術を用いた研究を通して、人間のより良い未来について考えます。
後悔しない大学の選び方7つのポイント
学部・学科について情報を集めたら、自分の興味や将来の目標、学び方、キャンパスの立地など様々な観点から、自分に合った大学を絞り込みましょう。
ここからは、後悔しない大学選びをする上で押さえておきたい7つのポイントを紹介します。
1.自分は何に興味があるのかを知る
まず、自分が本当に興味を持っていることは何かを知ることが大切です。大学で学んでみたいこと、これからの人生で挑戦したいこと、やりたいことを具体的に想像してみましょう。
・趣味や特技、心が躍ることなど、自分の好きなことをリストアップする
・過去の経験を振り返り、楽しかったことや達成感を感じたことを思い出す
・苦労なく続けられることや、得意なことは何かを考える
・自分の性格や価値観、強み、弱みなどを分析する
・家族や友人から見た自分の印象を聞いてみる
特に、他人から自分の印象を聞くことは、自分では気づかなかった得意分野や興味関心を発見するきっかけになります。
これらの作業を通じて、自分がクリエイティブな活動を好むのか、論理的思考を好むのか、新しいことへのチャレンジを好むのかなど、自分の興味について深く考えてみましょう。
2.10年後、20年後の自分を想像してみる
将来就きたい職業が明確な場合は、その職業に必要な知識や資格を得られる学部や学科を探しましょう。
具体的な職業イメージがわかない場合は、海外で生活したい、趣味を充実させたいなど、自分が理想とする生き方を考えてみましょう。それを実現するために必要なことは何か、どんな職業が適しているかを逆算して、学部や学科を絞り込んでいきます。
現代社会には、誰でも知っているメジャーな職業の他にも、見たことも聞いたことも無いであろう仕事や職種も数多く存在します。まずは世の中にどんな仕事があるのか情報を集め、その上で10年後、20年後の自分の姿を具体的にイメージしてみることが大切です。
3.自分に合う学び方を選ぶ
学部によって学び方は大きく異なります。早い段階から専門分野に特化集中して学ぶタイプ、まずは幅広い分野・知識から学んでいくタイプなど、様々です。
将来なりたい職業が明確な場合や、興味のある分野が絞れている場合は、入学時から専門的な知識を探究できる学部や学科が適しています。特に、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、弁護士、教員、管理栄養士などの資格は、特定の学部を卒業する以外に取得方法がないため、自然と進むべき学部や学科が決まってきます。
一方、やりたいことはあっても職業のジャンルが絞れない場合や、大学生活を通じてじっくり考え知見を広めたい場合は、多様な業界への就職を目指せる、幅広い学びができる学部や学科を選ぶと良いでしょう。また、充実したキャンパスライフを送るためには、授業以外の活動も重要です。例えば、英語サークルなどに参加して語学力を伸ばすことも、大学生活ならではの時間の使い方、可能性の広げ方と言えます。
4.通いやすさや立地について考える
興味のある学部や学科が絞れてきたら、大学の立地について考えることも重要です。
自宅から通える距離の大学であれば、交通手段や通学時間を調べ、実際に通学ルートを体験してみることをおすすめします。混雑具合や乗り換え時間、電車やバスの本数など、想像と現実が異なることもあるため、毎日の通学に支障がないか確認しておきましょう。
遠方の大学を検討している場合は、周辺環境の下調べが欠かせません。治安は良好か、生活に必要な施設は揃っているかなど、快適な大学生活を送れるかどうかをしっかりと確認しましょう。
自宅通学の大学と、一人暮らしや寮生活を選択する大学、どちらを優先するのか、自分の中で優先順位を決めておくと良いでしょう。
5.大学でかかる費用を計算する
大学進学には相応の費用がかかります。文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」によると、私立大学の学費は4年間で平均400万円程度、国公立大学は平均150万円程度とされています。
国公立大学の方が授業料は安価ですが、距離的に自宅から通えない場合は住居費や生活費が必要になります。また、通学に時間がかかる場合は交通費が高額になることも考慮する必要があります。
学費だけでなく、生活費や交通費も含めて、4年間でどの程度の金額が必要になるのか具体的に計算しておきましょう。
各大学が設けている奨学金制度や、国の給付型奨学金制度、企業による奨学金など、様々な支援制度も増えています。これらの情報を集めた上で、保護者とよく相談することをおすすめします。
6.複数のオープンキャンパスに行って比較する
自分の興味や学び方、立地や費用などを踏まえて、いくつかの大学をピックアップできたら、大学の公式サイトや資料を詳しくチェックしましょう。ただし、サイトや資料だけでは、本当の雰囲気をつかむのは難しいものです。「大学の方針や学ぶ内容が自分に合う」「良い大学」だと思っても、「実際に行ってみたらイメージと違った」ということも少なくありません。
大学には、大規模校や小規模校、都心のスタイリッシュな校舎、自然豊かな広大なキャンパス、サークル活動が盛んな大学など、様々なタイプがあります。
可能な限りオープンキャンパスに参加し、実際に足を運んで大学の雰囲気を体感してみましょう。キャンパスの環境はもちろん、在学生の印象、教員との距離感なども、自分の性格や希望と合っているかどうかを確認します。また、機会があればゼミの内容や研究テーマについて質問してみるのも良いでしょう。自分が思い描く学生生活を送ることができそうか、その大学に通う自分をイメージできるかどうかが重要です。
7.親や友達の意見に流されない
人の意見に耳を傾けるのはとても大切なことですが、その一方で、必要以上に親や友人の意見に流れない心がまえも重要です。「親が自分に合うと言った大学だから」「友人に誘われたから」など、他人の意見を軸にした志望校の決め方はおすすめできません。親や保護者の大学に対する印象は一世代前のものである可能性が高く、数十年で大学の特色は大きく変わることもあります。
4年間という大学生活は、人生の中でも非常に濃密で重要な時期です。自分の気持ちや意見が親・友人と一致する場合は問題ありませんが、「人に言われたから決めた」というのでは、入学後にトラブルが起きたり、やりたいことと違うと感じたりした時、こんなはずはなかったと思った時に、他人のせいにしてしまいがちです。
親や友人の意見は参考程度にとどめ、自分がその大学に進学して後悔しないか、4年間を充実して過ごせるかどうか、自分の意思や思いをしっかりと確認することが大切です。
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