皆さんこんにちは!本郷三丁目校講師の末吉です。
ポカポカ暖かい日が続き、日もだいぶ長くなってきましたね!
春はもう、すぐそこ( ^ω^ ) 皆さん元気にお過ごしでしょうか??
今月のコラムは「なぜ家で勉強できないのか?」です。
「なぜ家で勉強が出来ないのか?」
小学生のころから私たち人類を苦しめ続ける難題である。
この全人類共通の課題とも言える大いなる謎を解き明かすために
我々スタッフは南米のジャングル奥深くへと向かった。
ジャングルの奥地へと踏み入れた我々スタッフを待ち受けていたのは
「アフォデス…アフォデス…」と繰り返し呟いている、
ツルツル頭の小さな老人だった。
我々を案内してくれた現地スタッフも老人が何を言っているかはわからないという。
困り果てる我々を見て老人はニヤリと笑い、
どこからともなくサッカーボールを取り出してきた。
老人は我々の前にボールを置き、近くの岩を指さした。
その岩にはちょうどサッカーボール1つくらいなら通りそうな穴が開いている。
サッカーボールとその穴を交互に見ていると、
我々スタッフは自分達の心の中にある感情が生まれたことに気が付いた。
「このボール、蹴ってみたいなぁ…」
「蹴ったボールがあの穴に入ったら気持ちいいだろうなぁ…」
そう思いながらも身動きのとれない我々スタッフだったが、
我々の中に溢れる思いを止められない男がいた。
そう、タナカだ。
タナカはサッカーが大好きな男だった。
「ボールは友達だから」と言って、いつもボールを蹴っている男だ。
個人的には友達を蹴りまくるのはどうかと思うので、
絶対にタナカの友人にはならないようにしようと思っている。
そんな心配をよそにタナカはボールを蹴り、ボールは穴の中へ吸い込まれていった。
我々は許可なくボールを蹴ったことに老人が怒るのではないかと心配したが、
老人は満足そうに笑い、
「アフォデス…アフォデス…」とまた呟いていた。
老人の様子をうかがっていると、老人は近くの木を指さした。
その木に近づいてみると、ある異常に気が付いた。
「スイッチ」が木についているのだ。
我々が普段照明をつけたり消したりするあのスイッチが
木の幹にくっついているのだ。
ジャングルの奥地には当然電気など通っていないし、
周囲には照明や電子機器もない。
ただスイッチだけがあるのだ。
不思議に思いながらも、またしても我々は自分の心の中に声が生まれていることに気づく。
「あのスイッチ押してみたいなぁ」
「カチッってさせたい」
「押すことに意味が無くても、とりあえず押してみたい」
あるはずのないスイッチの存在に戸惑っていた我々だったが、
一人の男性スタッフが歩み出て口を開いた。
「あのー、自分、押してもいいっすか?」
普段無口なアオキである。
予想外の人物の発言にざわめくスタッフたち。
そう。アオキは常日頃から人前で目立つような行動は決してとらない男なのだ。
何の仕事をしているのかは知らないが、仕事の腕前は一流で、
皆から信頼を集めている男だ。
そんな男がなぜ…?
と皆が首をかしげる中、アオキが我々の疑問に答えるかのように言葉を続けた。
「実はおれ、スイッチマニアなんすよ。
スイッチを見たら押さずにはいられなくて…」
謎のカミングアウトに戸惑う我々に構わずアオキは言葉を止めない。
「おれ、このスイッチを押すために生まれてきたような気がするんすよね…」
絶対違うぞアオキ、生まれてきた理由があるのかどうかはわからないが、
少なくともそれは違うぞアオキ。
ていうかスイッチマニアってなんなんだ。世の中広いなおい。
様々な思いが頭の中を駆け巡るが、
アオキのスイッチへの思いを止めることは誰にもできず、
結局スイッチはアオキに託すことになった。
じっと見つめるスタッフ達。
ニコニコと嬉しそうにしている老人。
指をスイッチに伸ばすアオキ。
「カチッ」
という音がジャングルに響いたその一瞬、
我々スタッフは何かが起こるのではないかと身構えていたが、
特に変わった様子は無い。
老人はまたしてもニコニコと笑って
「アフォデス…アフォデス…」とつぶやいている。
緊張がほぐれた我々にほっとしたような笑いが起きる。
しかし一体何の意味があったのか。
我々は老人を再度見つめる。
老人は頭を掻いているような仕草をしていた。
いや、違う。
どうやら自分の頭を指さしているらしい。
彼のツルツル頭には何もないように見えたが、
近づいてよく観察してみると、毛が一本だけ生えていることに気が付く。
いわゆる「波平」状態である。
ツルツルの禿げ頭に1本だけチョロっと毛が生えているのである。
もうお分かりだろう。これを読んでいるあなただって、きっと思うはずなのだ。
「抜きたい」
そう、抜きたいのだ。
綺麗な机にゴミが一つだけ落ちていたら取りたくなるでしょう?
ペンキが一か所だけ剥がれていたら塗りたくなるでしょう?
禿げ頭に毛が一本だけあったら抜きたくなるでしょう?
毛を抜きたいという思いに自分を見失った私は老人の頭をがっしりと掴み、
毛の根元をしっかりつまんで、思い切りよく引き抜いた。
「ブチッ」
という音が響いた瞬間。私の目の前が真っ暗になった。
毛を抜いた解放感と暗闇への恐怖におびえる中で、老人の声が響いている…
「アフォデス…アフォデス…」
「ハッ」
ベッドの上で飛び起きる。
恐ろしい夢を見ていた。
一体何の夢だったのか。
ふと枕もとに置いてある読みかけの本を見る。
『アフォーダンス入門』
あぁ、これのせいか。あんな夢を見たのは。
そうそう。アフォーダンスね。
行動経済学と言われる学問で注目を集めている理論である。
例えば、床に足の形をした模様があると、
ついその上にのってしまいたくなったりしますよね?
腰の高さくらいの段差があるとつい座ってみたくなったり。
小便器の中に黒い点があると、つい狙ってしまったりしますよね?
これがアフォーダンス理論を活用した例です。
さて、冒頭の「なぜ家で勉強できないのか」という疑問も
このアフォーダンス理論で解決することができます。
あなたの家のリビングの一番いいところには何がありますか?
そう、テレビがありますよね?
じゃあテレビの前には何がありますか?
座り心地の良いソファやテーブルが置いてありませんか?
そしてテーブルの上にはお菓子や飲み物が置いてあったりしますよね。
この状況の中で、ソファに座ってテレビを見ない人って、
ほとんどいないと思います。
そう。家のリビングって、
ソファに座ってテレビが見たくなるように作られているんですよね。
さて、次は子供部屋を見てみましょう。
机のそばにベッドがあって、ベッドの近くには本棚があって、
本棚には漫画がいっぱい置いてあると。
そりゃあゴロゴロしながら漫画読んじゃいますよね。
だってそういう環境が作られているわけですから。
自然とそうしたくなるような環境が出来てしまっているんですよね。
なので、家で勉強が出来ないあなたがするべきことは以下の2つです。
- ① 勉強以外のことをしたくなるようなモノを全て取り除く
まずテレビを置かない。テレビが動かせないようなら、
テレビの周辺を居心地が悪いようにする。
テレビの角度を見にくい角度にするなどの工夫をしてみましょう。
自分の部屋であれば、とりあえず漫画やゲームは片付けて、
取り出すのに手間がかかるようにしましょう。
勉強以外がしづらい状況を作っていきます。
- ② 家を出よう
環境が変えられないなら、家にいてはいけません。
勉強しづらい環境で敢えて勉強する必要はありません。
それは自分で勝手に難易度を上げてしまっているだけです。
家で勉強することはさっさと諦めて、スマホを持たずに勉強道具だけを持って、
学校の自習室や図書館、ファミレスなどに行きましょう。
どうですか?アフォーダンス。
自分のやりたい事と、
場所の環境がズレてしまっていないかしっかり確認してみましょう。
保護者の方は子供に勉強をさせたいのであれば、
勉強しやすい環境をまずは整えてあげることがいいかもしれません。
生徒の皆さんも、自分の勉強場所を見渡してみましょう。
少しでも邪魔になりそうなものがあれば、どんどん片付けてしまいましょう。
そして最大の敵であるスマホと距離を置くことを少しずつ始めていきましょう。
長くなってしまいましたが、「アフォーダンス」、とっても大事です。
「アフォデス」って覚えると覚えやすいかもしれませんねー。
それでは!