してはいけない質問

皆さんこんにちは!車道校校長の中野です。

 

この時期、坪田塾では、受験生達が最後の追い込みに⽇々受験⼤学の過去問(いわゆる『赤本』ですね)を解いています。

泣いても笑っても、今までやってきたことの結果が出るわけで、誰だって緊張すると思います。ぜひ本番で持てるすべてを出し切ってほしいところです。

 

⼀方で、2⽉は新しい⽣徒さんが入塾してくる時期でもあります。

私⾃身、これからはしばらくは、新たに⼊塾する⽣徒さん、親御さんとの面談をしていきますが、今回はこうした⾯談でよく思うことをちょっとお話ししたいと思います。

 

塾に来てくれる⽣徒さんは、前までだと「お母さんに連れられて」来るケースが

多かったのですが、今は例えば『ビリギャル』を読んで、とか、あるいは『情熱大陸陸』を⾒見て、とか、⾃分なりに「僕も、わたしもこうなれたらいいな、なりたいな」という思いで、

つまり⾃分の意志で塾で学びたい、という⼦も出てきています。

 

⼊塾にあたって今の学⼒や⼼理テストを受けてもらい、

⾯談ではその結果を⽣徒さんと親御さんに説明し、

例えば英語なら「中学校2年⽣の復習から始めましょう」とか、

それぞれのレベルに合ったテキストの説明とかをして、じゃあ実際に、週何回塾に来ようか…と、通う回数や時間の設定をしていく訳です。

 

当然、親御さんも子どもに「勉強してほしい」とか「やる気になってほしい」と思っているので、塾で勉強を始めようとする⼦どもを⾒るとやっぱり嬉しそうなんですね。

 

でもここで⾯白いのが、塾に通うと決めた⼦どもに対して、

「本当に続けられるの?⼤丈夫?」と質問をする親御さんをよく目にします。

 

そうすると⼦どもは、「うーん…」とそこでまた不安になってしまいます。

「だって、前も途中でやめたじゃない」とか、「今回もまた、同じようになるんじゃないの?」という、たぶん今まで何度も⾔われ続けてきた⾔葉が頭の中でよみがえってくるのでしょう。

 

実は、この「⼤丈夫?」という質問は「悪魔の証明」といって、

基本的に証明ができない質問なんです。

 

例えば、「愛知県に蛇はいる」ということを証明するためには、

愛知県で蛇を一匹でも⾒つければ証明できますが、「愛知県に蛇はいない」ことは、愛知県全⼟を、同時に、くまなく探し尽くす必要があって、証明は⾮常に困難で、ほぼ不不可能だということです。

 

つまり、「ある事実が全くない」ことを証明することは、論理的にできない、ということです。

 

「⼤丈夫?」という問いかけは、

⾔い換えると「絶対に途中でやめない、失敗しない?」という問いです。これは悪魔の証明です。

 

でも、実際に毎日の⽣活のなかで、

私たちはこの悪魔の証明をとても頻繁に使ってしまっています。

親が子どもに、先⽣が⽣徒に、妻が夫に、夫が妻に、上司が部下に、この「本当に⼤丈夫なの?」という問いかけをしているのではないでしょうか。

 

だって、やっぱり聞きたくなりますよね?なぜなら、「不安だから」です。誰でもいいから、⾃分の不安を払拭してほしい、「⼤丈夫」と言ってほしいんです。

 

でも、問われた方は、「⼤丈夫」とは言い切れない。

だって、先のことはわからないからだし、そもそもこれは悪魔の証明だから、

「⼤丈夫」なんて証明できないんです。でもこれから塾に⼊る段階で聞かれたからには、

「⼤丈夫じゃない…」や「わからない」とはいえないですよね?!

 

これから頑張ろうと思った直後に「本当に頑張れるかな…確かに前もできなかったし…」と⾃分まで不安になります。そして、そうやって不安になっている⼦どもを⾒て、

親は「ほらやっぱりそうでしょ?」と、なんだかもう、何が⽬的なんだかわからなくなります。

 

まとめると、不安を解消したい、という欲求で聞いた質問(悪魔の証明)が、

聞かれた相手も不安にし、聞いた⽅ももっと不安になる、という(笑)。

 

私たちは、⼦ども達の過去がどうだったかには興味がありません

(正確には、過去がどうだったからこれからこうなる、という⾵には考えません)。

 

そうではなくて、今の⾃分のレベルがここ、⾃分がたどり着きたい(夢や志望校)レベルがここ、残りの時間がこれくらい、だから、今からこのテキストをこれくらいのペースで、

こういうやり⽅で(塾では、これを教えます)進めていけば⽬的が達成できそう!と考えます。

 

でも、⼦どもがこういう⾵に思えて⽇々モチベーションを維持できるようになるには、

私たちだけでは無理です。

⼦ども達と毎日接している親御さん達の協⼒が絶対に必要なんですね。

 

次に「⼤丈夫?」と⾔いたくなったときには、ぜひ、

この「悪魔の証明」のお話を思い出してみてください。