堀田朱花(ホッタシュカ)さん
慶應義塾大学 商学部
内田晴臣先生
坪田塾 横浜校 校長
「中学に入学した瞬間から、大学では慶應義塾を受験しようと決めていました」
インタビューの冒頭、そう語った堀田朱花(ホッタシュカ)さんは慶應義塾大学に対して並々ならぬ思いを抱いていました。
「中学受験で第一志望だったSFC(慶應義塾湘南藤沢中等部)に落ちてしまったんです。絶対に大学受験でリベンジしようと思っていました」
悔しさをバネに勉強に取り組みつづけ、6年越しのリベンジを果たした朱花さんの、坪田塾での奮闘を横浜校校長・内田先生とともに振り返ります。
弟の入塾面談についていったら、自分も入っていた
朱花さんと坪田塾を結びつけたきっかけは、朱花さんの弟さんでした。
「はじめは父が弟を坪田塾に入れようとしていたんです。色々と調べていくうちに私が坪田塾に興味を持つようになっちゃって。坪田塾の自学自習を中心としているところに魅力を感じました」
そもそも、塾に通うかどうかから迷っていたという朱花さん。
実際、学校の先生からは「塾に行かずに志望校に入った人はたくさんいる」と聞いていました。それでも、坪田塾になら通ってみたいと思ったそうです。
「日頃から、集団授業よりも、自習のほうが効果的だと感じていました。そんな時に、坪田塾の学習スタイルが自学自習中心だと知って。しかも自分に合わせた学習カリキュラムを提案してくれるということで『この塾なら自分に合うのではないか』と思ったんです」
こうして朱花さん、お父さん、弟さんの3人で、坪田塾の入塾面談に出向きました。
「朱花さんのご両親とは何度か面談をさせていただきましたが、自発的に取り組むことができる朱花さんについて、ほとんど心配されていない様子でした」
当時のことを笑顔で振り返ったのは横浜校校長の内田先生。朱花さんの担当講師です。
入塾以前から、学校の成績で常に上位をキープしてきた朱花さん。部活動に全力投球しながら、テスト前にはしっかりと対策を行う。シンプルですが、やるべきことを着実にこなす力を持っていることが彼女の最大の強みでした。
実際、坪田塾で入塾時に実施している「9タイプ別性格診断テスト」で出てきた朱花さんの性格タイプは「堅実家」でした。物事が計画的に進むことを好み、コツコツと地道に取り組むことができるタイプですが、朱花さんの特徴と見事に合致しています。その一方で、突発的な出来事に対処したり、未経験のことに一人で対応したりすることには強い不安を覚えるという傾向もあります。坪田塾ではこのように生徒一人ひとりの性格を踏まえた声掛けを実践しています。
なお、学力はというと英語・数学ともに良好。
「両科目とも良い成績で驚きましたね。基礎がしっかり身についていることが分かったので、それを踏まえたカリキュラムを組みました」
入塾時の朱花さんの印象について内田校長はこう語りました。
知識を「入れる」のではなく、「使いこなす」ための授業
こうして朱花さんの通塾がスタートしました。
坪田塾では、まずは自分で予習をし、塾に来たら予習してきた範囲のチェックテストを受け、学習した内容を先生にアウトプットする、という流れで学習を行います。
これは単なるインプットにとどめず知識のアウトプットを最重視した「反転学習」と呼ばれる学習方法で、その学習効果の高さは科学的にも証明されています。
朱花さんは「反転学習」という坪田塾ならではの指導形式を、徐々に自分の力に変える材料にしていきました。
「独りで勉強している時って機会が無いんですが、アウトプットをし始めてから記憶の定着が格段に早くなったんです。」
指導では、先生と生徒さんの対話(ディスカッション)が中心となります。
朱花さんのアウトプットに合わせて、先生から「なぜ?」という問いかけが行われました。
入塾当初の朱花さんの印象について、内田先生はこのように語っています。
「学校の成績はすこぶる優秀な一方で、模試の成績がそれに見合っていないところがありました。というのも、模試や本番では知識を“覚える”だけでは対応できない問題が数多く出ます。覚えた知識をどう“使う”か。そこが朱花さんの課題であり、同時に伸びしろでもありました」
「まさに、知識の使い方が分かっていなかったと思っています」
当時の自身の課題について、朱花さんもこう振り返りました。
「知識」ではなく、「知識の使い方」。
これをマスターすることこそが朱花さんにとって一番必要な要素でした。
「英語でも古文でも、1つ1つの知識に対して『これってどういうこと?』とディスカッションを重ねていきました。知識は十分だったので、あとはそれを頭の中でどう繋げ、どう言語化するか。そこを強化する必要があったんです」
次々と繰り出される先生からの質問の嵐に応えるために、朱花さんも参考書を深く読み込むようになりました。
「ただ問題を解くだけであれば、部分的な知識だけで対応することも可能です。でも、人に説明するとなると、全体像を把握してないといけなくて。1つ1つの語句の意味など、細かいところにまでにこだわって勉強するようになりました」
こうした学習を繰り返すことにより、テストや模試を受けるときの感覚も変わっていったと言います。
「上位の大学では、直訳するだけでは理解できない英文がよく出てきます。細かい知識を頭に入れて、それを駆使するトレーニングを行ったことで、知識だけでは突破できない問題が解けるようになりました」
課題は“スピード”。英文読解に潜んでいた思わぬ落とし穴
入塾時点である程度基礎ができていた朱花さんですが、内田先生が組んだカリキュラムは、知識のつながりを意識するために基礎から徹底的に学び直す、というものでした。
中学生の内容から基礎を見直していくこのアプローチのお陰で、英文法では「一問も落とさない」というレベルにまで到達します。
「模試でも文法は落とさないのが当たり前という状態になっていました。すごかったですね」
と内田先生。
「特に英語は完璧と言っていいほど、あらゆる単元を網羅することができました」
朱花さんも、英文法に関しては自信を持って取り組むことができるようになっていました。
そんな中で唯一課題となったのが英語の速読です。
当初は、目標時間1分半の長文を読むのに9分もかかっていました。
「自分でも『こんなにかかるの?』とびっくりしました」
その時のことを思い出し、朱花さんも苦笑い。
坪田塾では、英語の長文読解はまず「正確に読む」ことからはじめます。この段階では、どんなに時間をかけてもかまいません。そこから徐々に問題の難易度を上げていき、難関大レベルの英文を確実に読むことができるようになった時点で初めて速読に移ります。
朱花さんは正確に読む練習の段階で、難関大学の問題にも十分対応できていました。
「これだけできるんだったら速読もいけるだろうと思っていたところ、『まさか!』だったんですよね(笑)。模試の結果からも速読が弱いことは分かっていたのですが、あんなにかかるとは…」
なんだか楽しそうに当時のことをお話しする内田先生。
志望校に合格した今となってはいい思い出話となっているようです。
部活との両立生活も、中学受験の悔しさから生まれた意思の強さで乗り切る
朱花さんの受験勉強には、部活との両立というハードルも存在しました。
夜の7時まで部活に打ち込んだ後、帰宅して勉強を始められるのは9時以降。
これほどハードな日々を過ごしながらも、すきま時間を見つけては勉強にあてていました。
「スポーツが好き」という気持ちが厳しいスケジュールをこなす原動力となりました。
「大学でも絶対にスポーツをやりたい。そうすると、受験期間とはいえ何もしないでいると体が鈍ってしまうと思って」
小学生の頃はサッカーに打ち込み、中学校では陸上部、高校ではバレーボール部に所属。朱花さんの生活は常にスポーツが中心でした。
「眠気と闘いながら必死に堪えて勉強している様子はやっぱり気になりましたね。寝落ちの仕方が普通じゃなかったんです。『寝てる』というよりかは『気を失っている』と言う感じで(笑)」
内田先生は、朱花さんがハードな日々を送っていることを理解していました。ただ、朱花さんの持つ可能性を見込んでいたからこそ、かける言葉も次元の高いものでした。
「もともと朱花さんは高い意識を持っている生徒さんです。学校の成績も良いし、ずっと努力もしている。とはいえそこで留まるのではなく、より高い所を見ていてほしいと思っていました」
と内田先生。
「世界史でこんなに取れてるってことは、朱花さんなら英語もこのくらいいけるんじゃない??」
朱花さんに対しては、さらに上を向いてもらうような声掛けを意識していました。
「もちろん、生徒さん一人ひとり、声の掛け方は違います。同じだけの勉強量をこなした時に『すごい!よくできたね』と声掛けをすることもありますが、こと朱花さんに関しては一歩先を見据えたメッセージを伝えるよう意識しました」
一見厳しく思える言葉の裏には「朱花さんならもっとできる」という確信があったのです。
そして、先生に発破をかけられるたびに「やらなきゃ!」と闘志を燃やした朱花さん。
「厳しいなんてまったく思いませんでした」
あっけらかんとした表情で、当時の心境を答えてくれました。
そのぶれない心の強さの根底には、中学受験で体験した悔しさがありました。
「中学入試で志望校全落ちだったのであれ以上の絶望はもうないだろうなと思っていたんです」
中学受験での挫折経験を原動力に変え、ハードなスケジュールの中、朱花さんは着実に学力を伸ばしていったのでした。
成果が現れはじめた高2の冬。
高校2年生の冬、坪田塾に通いはじめて半年ほど経った頃、学習の成果が成績に現れるようになりました。
55を超えることがなかった英語の偏差値は60台に。
ずっと偏差値40台だった苦手な国語も50を超えるようになりました。
「結果がついてこなくて心配な時期もありましたが、問題を解く力が身についてきたんです。『こういう風に問題を解けばいいのか』という感覚が徐々につかめるようになっていきました」
内田先生も朱花さんの成長に驚いていました。
「模試の偏差値『55』と『60』の間には大きな壁があります。偏差値55レベルまでは、まさに“知識”だけで対応できるんですよ。ただ偏差値60レベル(上位15%)となると知識だけでは解けない問題に対処できるようになる必要があります。そのレベルに辿り着くのは高3の春頃と想定していたのですが、朱花さんは予想以上に早くその壁を乗り越えてくれました。『コツコツやる子が強いんだなぁ』とそのとき改めて思いましたね」
授業中のやり取りの様子も、入塾当初とは大きく変わりました。
「指導中もよく喋れるようになっていました。最初の頃は質問に対して単語レベルでしか答えが返ってこなかったのですが、高2の冬頃には『どういうことだと思う?』といったオープンクエスチョンに対しても、きちんとした答えが返ってくるようになりました」
度重なる内田先生との対話によって、様々な知識が朱花さんの頭の中で繋がっていきました。そして、そこに問題演習を積み重ねたことで成績という結果に結びつくようになったのです。
少しずつ現実味を帯びてきた、慶應義塾大学という目標。
「朱花さんとは、慶應に行くことがもう決まっているかのような前提でやり取りをしていました。『行けるかどうか分からないけど頑張ろう』ではなく、『慶應、行くよね』という感じです。生徒さんの性格タイプによってはプレッシャーになることもありますが、朱花さんにはプラスに働くことがわかっていたので、こちらとしてもスタンスをブラさずに接していました」
思いがけず巡ってきたチャンスをものにして、念願の慶應義塾大学へ。
高校3年生の夏、内田先生は朱花さんから思いもよらぬ事実を告げられました。
「ある日朱花さんがやってきて『推薦が取れそうなので出しておきました』と伝えられたんです。それまで推薦の話が出たことがなかったので、正直なところ想定外でした」
驚きはありましたが、実は内田先生、朱花さんが指定校推薦に出願を決めた事が嬉しかったそうです。
「彼女の性格上、推薦を取れる見込みがないのであれば出さないだろうなと。ということはこれはほぼ確実に通るだろうなと。私の中で朱花さんの慶應進学が決定した瞬間でした」
無事に校内選抜を通過すると、次は小論文や志望動機書の準備。これらも内田先生と二人三脚で推敲を重ねました。
小論文のテーマは「福沢諭吉の『福翁自伝』から学んだことをどう大学生活に活かすか」というもの。苦戦しながらも朱花さんは自分自身でしっかりと向き合いました。先生も、慣れない課題に取り組む朱花さんをサポートもしつつ見守ります。
無事に準備を終えて小論文と志望動機書を提出した後、朱花さんはすぐに一般入試に向けた勉強に切り替えました。
「朱花さんは本当にすごいんです。多くの生徒さんの場合、『推薦』という選択肢が目の前にあるとどうしてもそっちに引っ張られてしまいます。でも朱花さんは手を緩めることが一切なく、一般入試合格に十分届くレベルにまで伸びていきました」
推薦入試を終えた後もなお受験勉強に精を出すさなか、朱花さんのもとに合格通知書が手渡されました。
「校内選抜を通過した時点で手応えはあったのですが、やっぱり合格通知書をもらったことでとてもホッとしました」
夢の慶應で、好きなこと、学びたいことをやり尽くす
改めて、朱花さんに坪田塾のでの2年間を振り返ってもらいました。
「坪田塾の自学自習を中心とする方針が私にはすごく合っていました。中学生の時は集団で授業を受けるほうが成績を伸ばしやすいと思いますが、最終的には自学自習をきちんと行ったほうが学力が上がると思います」
女子サッカーの環境が整っているという慶應義塾大学。朱花さんは大学でも大好きなサッカーをやるそうです。
また、将来の夢についても語ってくれました。
「父の影響で投資に興味を持つようになりました。なので、大学ではマーケティングや金融を学びたいと思っています。将来は、大学で学んだマーケティングを活かして大好きなサッカーを広められるような仕事をしたいです」
受験を終えた今、毎日を楽しく過ごしているという朱花さん。
すでに大学生活に向けての勉強も始めています。
「英語のクラス分けに向けて今はTOEICの勉強をしています。他にも家族旅行に行ったり、受験期間中はできなかったことをやったりと楽しんでいます」
絶対にブレない芯の強さで、夢に向かってひたむきに走っていく。
そんな朱花さんの今後が楽しみです。
講師コメント
内田晴臣 横浜校校長
朱花さんは定期テストの勉強のように受験勉強をこなす生徒さんでした。定期テスト直前に集中的に勉強する、ということはよくあるかと思いますが、朱花さんはその集中力をずっと維持したまま1年以上受験勉強に取り組んでくれていました。これは本当にすごいことです。目の前の小さな結果に惑わされることなく、自分のやるべきことにひたすら取り組み続けるブレない心で、進み続けてくれました朱花さん。彼女の受験勉強に伴走できたことを、とても誇りに思います。