高校受験の倍率とは?1.0未満なら安心?数字に惑わされないための要点解説(2024年最新)

高校受験において、多くの受験生や保護者が「倍率」という数字に注目します。 「高い倍率は競争が激しい」「倍率が1.0未満なら全員合格」といった印象を持つ方も多いのではないでしょうか。 しかし、高校受験の合格の可能性を倍率だけで判断することには注意が必要です。 倍率が低い高校だからといって、必ずしも合格しやすいわけではないのです。

本記事では、高校受験における倍率について、「3つの種類とその定義」「合格圏であるかどうかの考え方」「倍率を参考にする際に気を付けたいポイント」について、徹底解説します。 正しい理解と考え方を身に付けて、倍率を高校選びに活かしていきましょう。

  

高校受験での倍率とは?

高校受験における「倍率」は、特定の高校の受験者数に対して、合格者数がどのような割合になるかを数値で示したものです。

・生徒200人の募集定員に対して応募者1000人の場合:1000÷200=5(倍率5倍)

生徒200人の募集定員に対して応募者180人の場合:180÷200=0.9(倍率0.9倍)

このように、倍率5倍の場合は、5人に1人が合格、倍率が0.9倍の場合は数字の上ではほぼ全員が合格する計算となります。 一般的に、数値が高いほど競争が激しく、合格への道のりが困難であること、反対に数値が低いほど合格の可能性が高まると考えられます。 ただし、実際には数値に関わらず様々なケースが考えられるため、倍率について正しく理解しておく必要があります。

  

高校ごとの倍率を知るには

高校の校舎外観

公立高校の場合、各都道府県の教育委員会のホームページや新聞で、

・学科ごと(普通科や総合学科など)

・課程ごと(全日制や定時制・通信制など)

の各年度の倍率を確認することができます。

参考までに、2024年度の都立高校の最終応募状況を見ると、多くの学校が1倍から2倍の間で推移していることが分かります。

学校名最終応募倍率
千代田区日比谷高等学校1.81
港区三田高等学校1.93
新宿区戸山高等学校1.98
文京区竹早高等学校1.77
台東区上野高等学校1.95
墨田区日本橋高等学校1.34
江東区城東高等学校1.91
東高等学校1.43
品川区大崎高等学校1.52
小山台高等学校1.35
目黒区目黒高等学校1.96
大田区蒲田高等学校1.08
田園調布高等学校1.87
世田谷区桜町高等学校1.08
千歳丘高等学校1.33
渋谷区青山高等学校2.07
中野区鶯宮高等学校1.66
杉並区杉並高等学校1.69
豊島区豊島高等学校2.27
荒川区竹台高等学校1.53
板橋区板橋高等学校1.57
大山高等学校0.61
練馬区練馬高等学校1.35
石神井高等学校1.7
足立区足立高等学校1.34
青井高等学校1.23
葛飾区葛飾野高等学校1.71
江戸川区江戸川高等学校1.71
小松川高等学校1.27

その他の都立高校や、神奈川、千葉、埼玉の公立高校(県立高校)の倍率については、各教育委員会の公式サイトで詳細な情報が公開されています。

令和6年度東京都立高等学校入学者選抜応募状況(東京都教育委員会)
令和6年度公立高等学校一般入学者選抜等本検査受験者数一覧(千葉県教育委員会)
令和6年度埼玉県公立高校における入学許可候補数(埼玉県教育委員会)
令和6年度神奈川県公立高等学校入学者選抜一般募集共通選抜等の志願者数について(神奈川県教育委員会)

一方、私立高校入試の倍率情報は、各学校の公式サイトで確認する必要があります。 塾に通っている場合は、受験説明会などで近隣の高校のデータをまとめて教えてくれることがあるので、積極的に入試情報を集めましょう。

  

倍率の3つの種類について

高校受験の基礎知識として、まずは3種類ある「倍率」を押さえておきましょう。 3つの倍率はそれぞれ数字の意味や見方が少しずつ異なります。 ここからは、ひとつずつ具体的な例を交えて解説していきます。

  

応募倍率(志願倍率)

応募倍率(志願倍率)とは、募集定員に対して志願者数が何倍にあたるかを示す数値で、以下の計算式で求められます。

志願者数÷募集定員=応募倍率(志願倍率)

例えば、募集定員100人の高校に500人が志願した場合、500÷100=5で、応募倍率は5倍と計算できます。

応募倍率の特徴は、志願者の数をもとにしているため、試験前の段階で把握できる点です。 ただし、応募後の辞退者や、合格後の辞退者の人数は考慮されておらず、応募時点での最大数値をもとに計算されるため、他2つの倍率と比べて高くなる傾向があります。

また、後述しますが、公立高校入試において志願先の変更が認められている都道府県では、受験直前に最終的な応募倍率が変動する可能性があるため注意が必要です。

  

受験倍率

受験倍率とは、受験した人数が募集定員の何倍にあたるかを示すものです。 実際に試験を受けた人数を基準に計算されるため、受験後に初めて数値が分かります。

受験者数÷募集定員=受験倍率

応募をしていても、他校への合格や体調不良などの理由で受験を辞退・欠席する生徒が出るため、実際に受験する人の数は応募した数よりも少なくなります。

例えば、募集定員が100人の高校の志願者数が500人だったとしても、実際の受験者数が400人になれば、400÷100=4で受験倍率は4倍になると計算できます。

このように、応募倍率より受験倍率は下がるのが通常です。

  

実質倍率(実倍率)

実質倍率は、受験者数が最終的な合格者数の何倍にあたるかを示した数値です。

受験者数÷合格者数=実質倍率(実倍率)

高校によっては、合格発表後の辞退者を見込んで、募集定員より多い人数を合格とする場合があります。 その場合、受験倍率よりも実質倍率のほうが低くなります。

例えば、募集定員100人に対し、辞退者を想定して合格者を130人とした場合、受験者数が400人であれば、400÷130≒3で、実質倍率は約3倍となります。

実際に合格した人数を踏まえて入学試験後に計算するため、倍率の指標としては最も正確な値といえます。

     

私立高校は応募倍率と実質倍率の差が出やすい

机に向かって勉強している学生

私立高校の場合、公立高校との併願受験が多いため、合格後に辞退する学生が一定数出ることが予想されます。そのため、私立高校では通常、募集定員を上回る合格者を出すことが一般的です。

都内私立の一般入試(募集定員70名)の例。入試結果(青山学院高等部)

・志願者数957名÷募集定員70名≒応募倍率14倍
・受験者数802名÷募集定員70名≒受験倍率12倍
・受験者数802名÷合格者数196名≒実質倍率4倍

このように、募集定員より合格者数が大幅に多い場合、応募倍率と実質倍率には大きな開きが生じます。この例では、当初14人に1人の割合が、実際には4人に1人が合格できる状況となっています。

各私立高校では、過去の実績をもとに予想される辞退者を考慮したうえで、合格者数を算出しています。そのため、倍率を参考にする際は、応募倍率だけではなく、必ず実質倍率を確認するようにしておきましょう。

   

定員割れ(倍率1.0未満)の高校入試でも油断は大敵

応募者数が募集人数に満たない場合、倍率は1.0未満となり、「定員割れ」と呼ばれます。この場合、追加募集や補欠募集が行われることも多く、受験者全員が合格する可能性は確かに高くなります。
しかし、倍率が低くても注意が必要です。というのも多くの高校では、一定の学力基準を設けており、その基準に満たない成績の場合は不合格となることがあります。つまり、「定員割れだから成績が悪くても合格できる」という考え方は危険なのです。定員割れの高校を受験する場合でも、その学校が求める学力レベルをしっかり身に付けて、試験や面接、自己表現など受験で求められる対策に真剣に取り組むことが大切です。

   

合格の目安は模試の判定と倍率で考える

模試で自分の偏差値を知る

志望校への合格可能性は、倍率だけでは正確に判断できません。実力に見合った志望校選びのためにも、倍率に加えて、模試の合格判定を併せて活用し、同じ高校を目指すライバルたちとの競争に勝てるかどうかを見極める必要があります。
合格判定は、模試を運営する会社が過去のデータ(受験生の偏差値、得点率、模試結果など)と、模試を受けた生徒の成績を比較したうえで算出します。それぞれの判定がどの程度の合格可能性を示すのか、詳しく見ていきましょう。

  

A判定、合格圏(合格可能性80%以上)

模試での成績(偏差値や得点率)が、志望校の過去の合格者平均を上回っている状態です。「安全圏」とも呼ばれ、合格の可能性が非常に高いことを示します。すなわち、志望校合格に必要な学力が十分に身についていると判断できます。このレベルであれば学力に問題はなく、たとえ倍率が高くても志望校合格の可能性は十分にあると言えるでしょう。

  

B判定、可能圏(合格可能性60~80%)

模試の成績(偏差値や得点率)が、過去の合格者の平均とほぼ同等である状態です。合格可能性は高いものの、さらなる努力が求められることを示します。
例えば、倍率が3倍の場合、300人の受験者のうち上位100人(上位3割)に入らなければ合格することができません。一方、倍率が1.5倍の場合、300人の中で上位150人に入れば合格できます。B判定=60~80%の合格可能性ということであれば、上位3割は難しくとも、半分以上には入ることができそうだと推測することができます。

このように、同じ合格「可能圏」であっても、高校の倍率によっては合否に影響が出ることがあります。

  

C判定、努力圏(合格可能性40~60%)

模試の成績(偏差値や得点率)が、過去の合格者平均をやや下回っている状態です。合格の可能性は五分五分で、B判定と同様に倍率の影響を受けやすくなります。

B判定(可能圏)と同様に、C判定(努力圏)も倍率によって合否に影響が出ます。

  

D判定、要努力圏、再考圏(合格可能性20~40%)

模試受験者の成績(偏差値や得点率)が、過去の合格者平均を大きく下回っている状態です。合格の可能性は低く、かなりの努力が必要であることを表します。

志望校が求める成績基準を下回っている可能性が高く、倍率が低い場合でも不合格の可能性があります。志望校のレベルを下げない場合は偏差値を上げる努力が必要となります。

  

E判定、再考圏(合格化の生20%以下)

模試受験者の成績(偏差値や得点率)が、過去の合格者平均に大きく及ばない場合に用いられ、合格の可能性が非常に低い、厳しい状況であることを表します。

志望校の成績基準に及ばないことを示しているため、倍率に関わらず不合格になる可能性がより高くなり、偏差値を上げる努力、また、志望校の再考が必要です。

このように、倍率と併せて、現在の自分の学力、成績を合格判定などで確認しながら、志望校を決定することが大切です。

   

高校受験における倍率で気を付けたいポイント

最後に、高校受験における倍率を、志望校決定の参考にする際に、気を付けたいポイントをお伝えします。

  

倍率は直近3年分見ておくのがオススメ

高校の倍率には、「揺り戻し現象」が見られることがあります。ある年の倍率が低かった高校で翌年の応募者が増えて倍率が上がり、さらに翌々年は応募者が減って倍率が下がる、といったパターンのことを指します。
実際、前年度の低倍率データを見て志望校を選ぶ受験生が多いため、自分が受験する年に応募者が殺到して倍率が上がる、といったケースは決して少なくありません。

受験生必見の対策として、倍率は前年度のみを参考にするのではなく、直近3年分は確認したうえで志望校決定の判断材料にすることをおすすめします。

  

倍率が低い高校が合格しやすいわけではない

「倍率が低いから合格しやすい」という単純な考え方は危険でおすすめできません。例えば、倍率が低くても、自分よりも高い学力の学生が集中している場合は合格が難しくなります。逆に、倍率が高くても受験生全体の学力が自分よりも低ければ、合格の可能性は十分にあります。
大切なのは、毎年の受験生の学力レベルを把握し、模試の合格判定や自分の偏差値と照らし合わせながら、総合的に検討し判断することです。

  

倍率だけで学校の難易度を判断しない

倍率は、単に志願者・受験者・合格者の数だけで競争率を表している指標で、どんな学生が受験しているか、受験生の質までは分かりません。例えば、倍率2倍でも偏差値65以上の生徒が集中する高校もあれば、倍率10倍でも受験生の多くが偏差値40~50台という高校もあります。学校の人気には教育方針や校風なども影響するため、倍率の数字だけで高校の難易度を判断するのは適切ではありません。

  

応募倍率によって志望校を変えるかどうか

各都道府県の入試制度によって仕組みは異なりますが、多くの都道府県の公立高校入試で、応募締め切り後に一度だけ出願校を変更する「志願先変更」が可能です。

「応募した高校の倍率が高くて不安だから、倍率の低い高校へ変更したい」と考える受験生は少なくありません。しかし、最終判断は慎重に行う必要があります。なぜなら、同じように考える受験生が多いことから、変更先の高校の倍率が急上昇する可能性があるからです。

応募倍率を見て志望校変更を検討する場合は、必ず学校の先生や塾の先生に相談して、その上で判断するようにしましょう。

  

倍率に関係なく受験対策を行うことが大切

高校受験において、倍率は志望校選択の重要な判断材料の一つですが、倍率だけで受験校を決めることはおすすめできません。倍率は年度によって変動しますし、低倍率が必ずしも合格を保証するわけではないからです。

最も大切なのは、応募後に高い倍率を見ても、「模試で高い判定を得ている」「試験で高得点を取れる学力を身に付けたから問題ない」という自信を持って学力検査に臨めることです。そのためには、効果的な勉強法を確立し、内申点アップや偏差値アップを目指した地道な学習と受験対策を、日々しっかりと積み重ねていくことが必要不可欠です。

  

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