
高校受験に向けて、英検®を受験したほうが良いのか、迷っている中学生のお子さんや保護者の方は多いのではないでしょうか。
「実用英語技能検定(英検®)」は日本英語検定協会が実施している検定試験です。これは自分の現在の英語力を測るためのテストですが、それだけではなく、一定の級を取得している場合には高校受験で有利に働く可能性があります。
本記事では、英検®の何級以上が受験にプラスになるのか、各級の難易度、公立高校・私立高校で英検®を活用した優遇措置を受けるための条件や取得時期の目安、効果的な勉強法、高校入試の英語との違いなど、高校受験対策としての英検®に関する情報を詳しく解説します。
※最新の情報は各高校の入試要項等を確認してください。
英検®取得は3級以上が高校受験で有利に
英検®を受験し、級を取得している場合、高校入試で有利に活用できるケースがあります。ただし、高校受験で活用できるのは、基本的に3級以上であることがほとんどです。
まずは、英検®がどのような試験で、各級の難易度はどの程度なのか、そして高校受験においてなぜ3級以上の取得がプラスに働くのか、その理由を解説します。
英検®とは
英検®は、日本英語検定協会が実施し、国内で広く認知されている英語の技能検定試験です。小学生から社会人まで、幅広い年齢層の人々が英語力の目安として英検受験に挑戦しています。
評価されるのは以下の4技能です。
・Reading(読む)
・Listening(聞く)
・Writing(書く)
・Speaking(話す)
このうち、リーディング・リスニング・ライティングは一次試験(筆記試験)、3級以上のスピーキングは二次試験(面接試験)で評価されます。
各技能の満点スコアは級によって異なり、3級は各550点、準2級は各600点、2級は各650点となっています。(スピーキングのみ50点ずつ多い)
受験方法としては、中学校で団体受験として申し込むか、英検公式サイトから個人で申し込み個別試験として受験することが可能です。また、英検の準会場として登録されている塾などでも、団体受験が可能な場合があります。
英検®各級の難易度
英検®の級は、数字が小さくなるほど難易度が上がります。具体的には、以下の表のように7段階の級でレベル分けされています。
級 | レベルの目安 | 推定語彙数 | 対象者のイメージ |
---|---|---|---|
5級 | 中学初級程度 | 約600語 | 英語初心者 小学生~中1レベル |
4級 | 中学中級程度 | 約1,300語 | 中1~中2レベル |
3級 | 中学卒業程度 | 約2,100語 | 中3 高校入試の基礎レベル |
準2級 | 高校中級程度 | 約3,600語 | 高1~高2レベル 大学受験準備 |
2級 | 高校卒業程度 | 約5,100語 | 高校卒業・大学受験 一般就職向け |
準1級 | 大学中級程度 | 約7,500語 | 難関大学受験 専門職向け |
1級 | 大学上級程度 高度な英語力が必要 | 約10,000語以上 | 通訳・翻訳レベル 専門職・海外勤務向け |
高校受験で一般的に求められるレベルは、中学卒業程度とされている3級以上です。表の通り、英検®3級の試験内容は、中学3年生までに学習する内容がベースとなっており、高校入試の英語と重なる部分が多いとされています。そのため、3級に合格していることは、高校入試に必要な基礎力が身についているという評価につながるのです。
英語への積極的な姿勢を評価する目的で、5級や4級を優遇措置の対象とする高校も増えてきていますが、そちらはまだまだ数が少ないのが現状です。取得級の高い方が評価されやすくなります。
英検®を使った高校受験の優遇措置とは
英検®の取得は、公立高校受験・私立高校受験において優遇措置として扱われる可能性があります。高校ごとに優遇の方法は異なり、一般的には公立高校よりも私立高校のほうが優遇制度を設けている学校が多く、優遇内容やパターンも多様であるとされています。
一般入試では、主に調査書(内申点)への加点、英語試験の得点への換算、英語の学力検査免除、入学金や授業料の免除といった措置が取られます。
一方、推薦入試では、出願条件として利用されたり、面接や作文・志望理由書などで「努力・目標達成」の証として評価されたりするのが一般的です。
ここでは、公立高校・私立高校それぞれで、どのような優遇措置が設けられているのかを紹介します。
【公立高校でのメリット】調査書(内申点)の加点など
公立高校の場合、自治体によって英検®の優遇措置を設けている場合と、そうでない場合があります。
例えば、東京都、神奈川県、兵庫県の公立高校では、英検®による明確な優遇措置は基本的にありません。自己PRカードや調査書の特別活動の記録などに記載することはできますが、直接的な加点対象にはならないため、大きなメリットは期待しにくいとされています。
一方、千葉県では調査書の「特別活動の記録」として、埼玉県では調査書の「その他の項目」の得点として、英検®の取得実績を加点する高校が多く存在します。どちらの県も、高校によって加点基準となる級や、加点される点数、加点の上限などは異なります。
【千葉県:特別活動の記録としての加点を明記している高校の例】
4級以上 | 佐倉南・清水・関宿・船橋北・船橋法典 |
3級以上 | 市川東・市川南・市原緑・浦安・浦安南・鎌ヶ谷西・犢橋 東金商業・流山北・船橋豊富・船橋二和・松尾・茂原・四街道 |
準2級以上 | 磯辺・柏の葉・鎌ヶ谷・木更津・佐原・匝瑳・千葉南 長生・津田沼・船橋東・八千代 |
2級以上 | 成東 |
※詳しくは、各高校の公式サイトを確認してください。
参考:千葉県「県立高校学校名簿(五十音順)」
【埼玉県:調査書のその他の項目の得点として加点を明記している高校の例】
5級以上 | 小鹿野・三郷工業技術・妻沼・吉川美南 |
4級以上 | いずみ・岩槻商業・浦和商業・大宮武蔵野・越生・久喜工業 栗橋北彩・鴻巣女子・越ケ谷総合技術・児玉・狭山清陵 志木・庄和・白岡・進修館・杉戸農業・誠和福祉・草加西 所沢商業・新座・新座総合技術・新座柳瀬・ふじみ野・三郷・宮代 |
3級以上 | 上尾・上尾橘・伊奈学園総合・入間向陽・岩槻・浦和北・大宮光陵 大宮東・大宮南・小川・桶川・春日部工業・春日部東・川口 川越総合・久喜・久喜北陽・鴻巣・越ケ谷西・越ケ谷東 越ケ谷南・狭山工業・杉戸・草加・草加東・草加南・秩父・常盤 所沢中央・豊岡・滑川総合・鳩ケ谷・羽生第一・飯能・深谷商業 富士見・本庄・松伏・三郷北・与野 |
準2級以上 | 朝霞・浦和第一女子・浦和西・春日部女子・川口北・川越 川越女子・熊谷・熊谷女子・熊谷西・芸術総合・越ケ谷・越ケ谷北 坂戸・所沢・所沢北・所沢西・不動岡・松山・松山女子 和光国際・蕨・川口市立・市立浦和・市立浦和南・市立大宮北 |
2級以上 | 浦和・大宮・春日部 |
※詳しくは、各高校の評価基準を確認してください。
参考:埼玉県「令和7年度埼玉県公立高等学校入学者選抜における各高等学校の選抜基準」
加点の上限は10点・20点・30点程度の高校が多いですが、級に応じて段階的に加算する場合や、他の資格と合わせて評価する場合などでは、70点・80点と上限が上がる傾向にあります。また、新座高校のように、4級以上、3級、2級と評価区分を分けて加点している高校もあります。一方で、級を明記せずとも、資格検定の取得自体を加点対象としている高校もあります。
愛知県では、一般選抜での加点はありません。ただし、推薦においては、3級もしくは準2級以上の取得を出願条件としている場合がありますので注意が必要です。英検®のみが基準となるわけではありませんが、例えば、半田高校では準2級以上、天白高校では3級以上、中村高校では準2級以上またはCEFR A2レベル相当以上の資格やスコアなどが推薦基準として活用でき、英検®の一定級取得者であれば、推薦で有利に働く可能性があります。
また、大阪府では、外部機関の英語力判定テストのスコアを、英語の学力検査の得点として活用できるという優遇措置があります。英検®の場合、準1級・1級では100%(90点満点)、2級では80%(72点)として換算した点数と、当日の英語の学力検査の点数を比較し、高いほうの点数が志願者の成績として利用されます。
このように、公立高校入試における英検®による優遇措置は、都道府県によって大きな差があります。英検®の活用による加点やメリットが大きい自治体で高校受験をする場合は、英検®3級以上の取得に挑戦しておくことが、志望校合格の可能性を広げる手助けとなるでしょう。
【私立高校でのメリット】学力検査への加点など
私立高校の受験では、どの都道府県においても、英検を活用できる機会が多いのが一般的です。優遇内容は高校ごとに異なりますが、主に以下のようなメリットがあります。
・推薦入試の出願資格として利用できる
・調査書(内申点)への加点
・学科試験の得点への加点
・学科試験の免除
・入学金の免除
など
多くの高校で英検®3級以上、あるいは準2級・2級が求められ、難易度の高い級を取得しているほど、加点される点数が高くなるのが一般的です。特に、英語教育に力を入れている高校や、スーパーグローバルハイスクールに指定されているような学校では、高い確率で優遇措置が設けられています。そのような高校を志望校とする場合は、積極的に英検®を活用することをおすすめします。
高校によって優遇内容や基準は異なるため、早めに志望校の公式サイトやパンフレットなどで募集要項を確認しておきましょう。
高校受験を見据えて英検®はいつまでに取得するべき?
高校受験で英検®を利用するためには、出願時に合格証明書などを提出する必要があります。そのため、以下の出願時期を見据えて、中学3年生の12月までには希望する級を取得しておくのが理想的です。
・私立高校の推薦・一般入試→出願時期:12月~1月上旬
・公立高校の推薦入試→出願時期:1月中旬頃
・公立高校の一般入試→出願時期:2月上旬頃
英検®は年に3回の試験が実施されます。
・6月実施の第1回検定:合格証明書送付は7月中旬頃
・10月実施の第2回検定:合格証明書送付は 11月中旬頃
・1月実施の第3回検定:合格証明書送付は2月中旬頃
この日程を見ると、1月実施の第3回検定では、証明書の送付が出願時期に間に合わない可能性があります。高校受験で英検®を利用したい場合は、遅くとも中学3年生の第2回検定(10月実施)までに受験しておくのが確実です。
もし指定された試験日程で英検®を受験できない場合は、「英検S-CBT」の受験を検討するのも良い方法です。英検S-CBTで取得できる資格は従来型の英検®と同じで、高校入試にも活用できます。3級から準1級まで実施されており、1日で4技能すべてを測定できるため、高校受験のために英検®の取得を考えている受験生にとって、とても活用しやすい試験と言えるでしょう。
原則として毎週土日に実施されているため、部活動や自分の学習スケジュールなどに合わせて受験日を選択ができます。ただし、一部地域では毎週の実施がない場合や、平日にも実施しているケースもあるため、お住いの近くの試験会場の実施日を確認してみましょう。
英検®取得のための効果的な勉強方法は?
英検合格のためには、試験に出題されるリーディング、ライティング、リスニング、スピーキングの4技能をバランス良く伸ばすことが重要です。それぞれの技能ごとに効果的な英検対策があります。最も確実で効率的なのは塾などを活用することですが、それが難しい場合の学習方法のポイントを紹介します。
リーディング対策
英検®のリーディングは、語彙問題・長文読解・内容一致問題などの問題形式で構成されています。そのため、最も重要なのが語彙力の強化です。頻出する単語や熟語をまとめて、毎日少しずつ暗記していく習慣をつけましょう。
読解力を身に付けるためには、文法力の土台を固めることも大切です。関係代名詞、仮定法、受動態などの頻出文法は確実に理解しておきましょう。
ある程度、語彙力や文法力を強化できたら、過去問や模試を活用して、本番と同じ形式で出題される問題を解く練習をしましょう。繰り返し解くことで、出題パターンや選択肢の特徴にも気づきやすくなります。特に長文読解では、「なぜその選択肢が正解なのか」まで、解説を読み込み、理解を深めることが大切です。
また、英文を読む際には、単語を追うだけでなく、文全体の構造を意識しながら、主語・動詞・目的語などを把握する練習をすると、内容をスムーズに理解しやすくなります。段落ごとに「この部分では何を伝えたいのか?」を意識しながら読むことで、全体の構造が見えやすくなり、正解を選択しやすくなるでしょう。
ライティング対策
英検®のライティング(英作文)は、提示された話題に対して自分の意見を理由とともに述べる形式で出題されます。自分の考えを英語で論理的に表現する力が必要なだけでなく、特に2級以上では自然な英語表現が求められます。
まずは基本的な構成として、「導入→主張→理由と具体例→結論」という流れで文章を作成する力を身につけましょう。例題を使って練習し、自分で書いた英文は先生などに添削してもらうか、回答解説を読み込んでチェックをする習慣をつけることが大切です。ピリオドの打ち忘れやスペルミスは減点対象となるため、正しく書けているかどうかの確認を繰り返し行うことも重要です。
また、自分がよく使う表現をあらかじめストックしておくと、本番でスムーズに文章を書き進めることができます。表現のバリエーションを増やすために、似た意味を持つ複数の接続詞や副詞の使い方を身に付けておくと、読みやすく説得力のある文章を書けるようになるでしょう。
さらに、時間を計って書く練習を続けることで、本番の時間配分に慣れ、落ち着いて問題に取り組めるようになります。
リスニング対策
英検®のリスニングでは、比較的速いスピードの英語を聞き取り、会話の流れを把握する力が試されます。特に、短い会話、説明文、やや長めの対話やインタビューなど、パートごとに求められる力が異なるのも特徴です。
リスニング力を伸ばすためには、英語の音に触れる機会を増やすことが大切です。英検®の過去問の音源などを繰り返し聞いて、問題の形式やスピードに慣れておきましょう。最初は内容が分からなくても大丈夫です。全体の意味をつかんだ後、英文のテキストを見ながら聞き直し、さらに、一文ずつ聞いた直後に真似して発音する練習(シャドーイング)を取り入れると、リスニング力が高まりやすくなります。
英検®の問題だけでなく、英語のニュースや映画などを活用すると、さまざまな話し方や語彙に触れることができ、実践的なリスニング力を養うことにもつながるでしょう。
スピーキング対策
英検®のスピーキングテスト(面接試験)では、音読、質問への回答、意見の述べ方などが採点されます。英文を正確に読めるのはもちろん、正しい発音ができているか、読むスピードや流暢さも評価のポイントになります。特に準2級以上では自分の意見を述べるパートがあるため、短い時間で考えを英語でまとめ、相手に伝えるスキルが求められます。
まずは、学校や塾の先生などにお願いして、当日の面接試験を想定した練習することで、質問への答え方や表現に慣れておくのが良いでしょう。また、過去問の質問リストなどを使い、よく出題されるテーマについて自分なりの意見を事前に準備しておくのも有効な対策です。想定される質問に対して、即答できるようになるまで練習しておきましょう。
スピーキングは、実際に声に出して話すことが何よりも大切です。自分が英語で話した声をスマホなどで録音し、発音や文の構成などを客観的にチェックしてみるのもおすすめです。オンライン英会話などを利用して実際に会話をする機会を設けると、より自然な受け答えや表現が身につきやすくなります。
試験当日は緊張して話せなくなることもあります。落ち着いて、自信を持って本番に臨めるよう、何度も練習を重ねておくことが大切です。
英検®と高校受験勉強の英語との違い
英検®のための勉強と、高校受験の英語の勉強には共通点する部分もありますが、目的や出題形式、求められるスキルなどに違いがあります。
語彙力や文法力、読解力といった英語の基礎力は、どちらにおいても重要です。英検®でも、中学校で習う文法や単語などの語句が土台となります。ただし、高校受験勉強の英語は、リーディングと文法・語彙が中心の出題形式であることが一般的です。リスニングもありますが、比較的簡単なものが多く、ライティングは簡単な英作文程度、スピーキング試験も基本的にはありません。
また、英検®は級によって難易度が細かく分かれているのに対し、高校受験の英語の難易度は、地域や志望校によって異なるものの、中学校で学習する内容までが試験範囲となります。
英語が得意な中学生や、英語学習を先取りしたい場合は、受験勉強と並行して英検®にも挑戦することで、4技能がバランス良く伸び、高校入学後にも役立てることが可能です。特に3級や準2級は高校入試レベルに近いため、両方の対策として学習を進めることができるでしょう。
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