高校受験を控えた受験生にとって、偏差値は極めて重要な指標です。自分の偏差値を正確に把握することで、志望校の選択がしやすくなり、各教科における得意不得意を客観的に知ることができます。しかし、偏差値の本当の意味や効果的な活用方法を理解できていない受験生も少なくありません。また、保護者の方々も偏差値について正しく理解していなければ、お子さんの進路選択に適切なアドバイスができない可能性があります。
そこで本記事では、高校受験における偏差値の意味を詳しく解説します。さらに、偏差値の仕組みや効果的な活用方法、そして偏差値を上げるためのコツについても紹介します。公立高校や私立高校の受験を控えている方々は、ぜひ参考にしてください。
高校受験における偏差値とは
高校受験における偏差値とは、模試などの受験結果から算出される数値で、自分の学力がどの程度なのか、志望校に合格できる可能性がどのくらいあるのかを判断するための指標です。
志望校合格に必要な偏差値と比較することで、現在の学力と目標とのギャップを把握できます。偏差値は客観的な数字によって自分の学力を示してくれるので、効果的な学習計画を立てる際の指標としても活用することができます。
偏差値は全体の中での位置を示す指標
偏差値は、受験した学生のなかで、自分がどのくらいの位置にいるのかを示す指標です。
・偏差値50:平均点(母集団の真ん中)
・50より高い:平均より上
・50より低い:平均より下
高校受験に関する模試などでは、偏差値は大体30〜70の範囲に収まります。
模試の点数だけでも、全体の中での位置を示せるのではないか?と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、例えば模試で70点や80点を取って良い点数だと感じても、受験者のほとんどが70点以上であれば、実際には平均点レベルということになります。逆に100点満点中60点でも、他の受験者の点数が60点より低ければ、相対的に高い偏差値になる可能性があるのです。
こういった時に偏差値を用いれば、自分の成績が全体の中でどの位置にあるのかを客観的に把握でき、非常に便利です。偏差値だけを見て一喜一憂する必要はありませんが、自分の立ち位置を正確に理解し、効果的な学習計画を立てるためには、偏差値は欠かせない指標なのです。
「偏差値が10上がる」とはどういうこと?
「偏差値が10上がる」ということは、志望校を変更できるほどに自分の成績が大きく向上したことを意味します。以下の表は、偏差値の数値ごとに上位からの割合と順位を示したものです。
偏差値 | 上位からの割合 | 順位(1,000人中) |
---|---|---|
80 | 0.13% | 1.3位 |
75 | 0.62% | 6.2位 |
70 | 2.28% | 22.8位 |
65 | 6.68% | 66.8位 |
60 | 15.87% | 158.7位 |
55 | 30.85% | 308.5位 |
50 | 50.00% | 500位 |
45 | 69.15% | 691.5位 |
40 | 84.13% | 841.3位 |
35 | 93.32% | 933.2位 |
30 | 97.72% | 977.2位 |
例えば、偏差値50の人が60まで上昇したとします。これは、上位50%の地点から上位15.87%の地点に移動したことを意味し、成績が大幅に向上したことが視覚的にも理解できます。このように、偏差値が少し変動しただけでも、全体での順位は大きく変わってくるのです。
ただし、模試の内容や難易度によって受験者数も学力も異なるため、模試ごとに偏差値が変動することを忘れてはいけません。例えば、全国模試のように幅広い学力層の学生が受験する模試もあれば、難関校を志望する学生だけが受験する模試もあります。
全国模試で偏差値70を取得し、上位層に位置していたとしても、難関校対象の模試では偏差値50程度になる可能性もあります。模試を受験する学生の平均学力が高ければ、それだけ偏差値の基準も上がるためです。
このように偏差値は模試によって変動しますが、10ポイント上昇させることができれば、成績が大きく向上したと言えるでしょう。
偏差値の計算の仕方
偏差値は、以下の計算式で求めることができます。
偏差値=(個人の点数-平均点)÷標準偏差×10+50
標準偏差はデータの分散を示す指標です。受験者の点数が集中している場合は標準偏差が低くなり、高得点から低得点まで幅広く分布している場合は標準偏差が大きくなります。
具体的な計算方法を見てみましょう。平均点が50点、標準偏差が20のテストで80点を取得した場合は、以下のように計算できます。
(80-50)÷20×10+50=65
同じ点数でも、標準偏差が12だった場合は、次のように計算結果が変わります。
(80-50)÷12×10+50=75
このように、標準偏差が20の場合は偏差値65となるのに対し、標準偏差が12の場合は同じ点数でも偏差値75まで上昇します。標準偏差の違いによって偏差値が大きく変動するということを理解しておくことが重要です。
偏差値の仕組み
ここからは、偏差値の仕組みについて詳しく解説します。なぜ模試で自分の偏差値を知る必要があるのか、正しく理解しましょう。
模試を受けて自分の偏差値を知る
偏差値を知るためには、模試を受験する必要があります。塾や予備校では、様々な種類の模試を実施しています。自分の志望校に合った模試を選んで受験することが重要です。適切な模試を受けることで、より具体的な学習計画を立てられるだけでなく、苦手科目や得意科目を正確に把握することができます。
偏差値がわかれば成績を比べることができる
偏差値を知ることで、他の受験生と自分の成績を客観的に比較することが可能になります。単に模試の得点だけでは、自分の成績が全体のどこに位置するのかを正確に把握することは難しいです。例えば、国語のテストで90点を取得し、良い成績だと感じたとしても、実際の平均点が同じく90点程度であれば、それは優秀な成績とは言えません。このような場合、偏差値を用いて自分の位置を確認しなくてはいけません。
下図は、偏差値の数値でわかる学力の位置を示したものです。
偏差値50を平均として、70に近づくほど高得点であることがわかります。一方、偏差値が30に近づくほど、より一層の学習努力が必要な状況だと理解できます。
定期テストの偏差値と模試の偏差値の違い
定期テストと模試では、出題範囲、受験者層、配点方法に違いがあります。
定期テスト:
• 出題範囲:授業で学習した限定的な範囲
• 受験者層:同じ学校の生徒のみ
• 配点:問題によって配点が異なる(1点問題から5点・10点問題まで様々)
模試:
• 出題範囲:より幅広い範囲から出題
• 受験者層:全国規模や地域規模の学生が対象
• 配点:多くの場合、一問あたりの配点が統一(例:1問4点または1問5点)
模試は1問あたりの配点が高いため、小さなミスでも点数が大きく変動し、結果として偏差値も変わりやすくなります。このような違いを理解した上で、定期テストと模試の結果を適切に解釈することが重要です。
偏差値を高校受験にうまく活用するには
高校受験対策において、偏差値を上手に活用することで学習計画が立てやすくなります。具体的には、以下の活用方法が考えられます。
• 得意教科・苦手教科を分析して勉強する
• 高校の偏差値を志望校選びの目安にする
ただし、偏差値が十分であっても高校受験に合格できない可能性もあります。ここからは偏差値の活用方法とともに、注意すべきポイントについて解説します。
得意教科・苦手教科を分析して勉強する
模試を受けると、教科ごとの偏差値が示されます。これを参考にすることで、自分の得意教科・苦手教科を客観的に把握できます。同時に、設問分析表も確認しましょう。設問分析表には、科目ごとの苦手分野が詳細に記載されているため、自分の弱点を特定することができます。
得意科目は、より難度の高い問題集などを活用して応用問題に取り組みます。一方、苦手科目は基礎を固めたり、特に苦手な部分を重点的に勉強したりすることが大切です。特に、わからない点は放置せず、その日のうちに解決するという気持ちで取り組みましょう。苦手分野や得意分野をしっかり分析し、伸びしろがある範囲を見極めて勉強していくと、より効率的に偏差値を上げることができます。また、定期的に模試を受けることで、教科ごとの偏差値の変化を把握でき、その時々に合わせた勉強法を検討できます。
高校の偏差値を志望校選びの目安に
偏差値は、高校選びの目安にもなります。一般的に、自分の偏差値を基準に、前後3〜5程度の範囲で志望校を選ぶのが無理のない選択だとされています。
例えば、自分が偏差値60の場合、偏差値70の高校を志望すると合格の可能性は低くなります。一方、偏差値50の生徒が偏差値55の高校を志望する場合、努力次第で合格判定の道が開けます。偏差値65の高校に入学したい場合、最低でも自分の偏差値を60以上に持っていけるよう力をつけましょう。自分の学力レベルを正確に把握できるだけでなく、合格可能性の高い高校を見極めやすくなります。この考え方は、高校生が大学受験で志望校を選ぶ際にも同様に適用できます。
偏差値が足りていても合格できるとは限らない
高校受験で偏差値を活用する際の注意点は、偏差値が十分であっても必ずしも合格できるとは限らない、ということです。高校入試は点数のみで合否を判定するわけではないからです。例えば、入試での得点がどんなに高くても、内申点が低ければ内申書の評価が高い生徒が優先的に合格する可能性があります。また、面接などでうまく自己アピールできず、不合格になることもあり得ます。
さらに、学校によっては独自の入試問題が出題されることもあります。全国模試で高い偏差値を獲得していたとしても、実際の入試では十分な得点を取れない場合もあるのです。
偏差値は確かに重要な指標ですが、志望校合格のためには、どのような状況でも安定して高得点を取れるよう総合的な学力を身につけていくことが大切です。
高校受験のために偏差値を上げる方法
志望校合格のために偏差値を上げるには、以下の3つの方法を実践していきます。
• 5教科の基礎固めを徹底する
• 問題演習で応用力を強化する
• 模試の復習で弱点をなくす
それぞれの方法について詳しく解説していきます。
5教科の基礎固めが大切
まずは、5教科の基礎をしっかりと固めることがおすすめです。基礎が身についていなければ、応用問題を解くことはできません。
英語は、基礎となる単語と文法を優先的にマスターしましょう。単語や文法を確実に覚えておけば、長文が読めるようになったり、自分で文章を作れるようになったりと応用が効き、効率よく偏差値を上げることができます。
5教科の中で、特に偏差値アップに時間を要するのが国語です。英語と同様に短期間で偏差値を上げるのは難しいため、時間をかけて学習することが求められます。読解力は日々の積み重ねで養われるものであり、普段から様々な文章に触れることで自然と力を伸ばすことができます。
数学は、問題を解くために必要な公式をすぐに使えるよう暗記しておくことが大切です。もちろん、定義の理解も欠かせません。数学は基礎がおろそかになっていると応用問題を解くことが困難となり、偏差値の上昇も見込めません。
そのため、基礎的な問題を繰り返し解き、定義を理解した上で公式を適切に当てはめられるよう、毎日計算問題に取り組む必要があります。
理科は生物、地学、化学、物理の4分野がまんべんなく出題されます。生物や地学は暗記が中心となり、化学・物理は記号や定義を確実に覚えておく必要がある分野です。繰り返し問題集に取り組むことで、偏差値は着実に上げていくことができます。
最後に、社会は暗記が中心となるため、5教科の中で最も偏差値を上げやすい科目と言えます。人物名や年号、出来事をしっかり暗記しておくだけでも、偏差値アップにつながります。また、時代の流れに沿って覚えていくと、より深い理解が得られます。歴史的背景も併せて理解し、効果的な暗記法(例:語呂合わせ)を活用すると、より覚えやすくなるでしょう。
下表は、科目ごとの基礎固めのポイントですので参考にしてください。
科目 | 基礎固めのポイント |
---|---|
英語 | ・単語と文法を先にマスターすると、長文読解にも役立つ |
・音声などでリスニングを毎日行い、耳に英語を慣れさせておく | |
国語 | ・漢字や長文読解、古文、文法など範囲が広いため、できるだけ早く対策に取りかかる |
・古文の歴史的仮名遣い・よく使う古語・文法、書き方を覚えると、融合問題を解きやすくなる | |
数学 | ・公式を覚えたら、繰り返し問題を解いて使い方をマスターする |
・過去問を解いて、苦手分野を把握する | |
理科 | ・生物と地学の暗記を計画的に進める |
・元素記号や化学式を覚えたら、化学反応式やイオンの問題にチャレンジする | |
・物理は公式・公式が使える条件を把握し、何度も問題を解く | |
・1年生から3年生までで習った全体が出題範囲となるため、各単元の復習を欠かさない | |
社会 | ・地理は地誌について問われることが多いため、地域の特徴をイメージして覚える |
・歴史は、時代の流れを頭に入れてから人物・出来事を覚えていく | |
・公民は、暗記に加えて参考書などの図解を活用し仕組みを理解すると共に、学生向けのニュースサイトなどを日頃から読むようにする |
問題演習で応用力を強化
基礎固めができたら、次は問題演習を通じて応用力を強化していきます。多くの問題に取り組むことで応用力が養われ、どのような問題にも自信を持って対応できるようになります。
例えば、数学の応用問題を解く際には、単に公式を当てはめるだけでなく、問題文の意味を理解し、最適な解き方を選択する能力も必要です。繰り返し問題を解くことで思考力が鍛えられ、応用問題に対する苦手意識も徐々に克服されていきます。
また、実際の試験を想定して時間を計りながら問題演習を行うことも重要です。これにより、本番の試験でも焦ることなく落ち着いて問題に取り組めるようになります。
模試の復習で弱点をなくす
模試は、一度受けて終わりではありません。結果をしっかりと復習し、弱点を克服することが大切です。間違えた問題の原因を特定して再度解き直すだけでなく、類似問題にも挑戦することで理解を深め、知識の定着を図ります。
偏差値を上げながら受験勉強を進めるには、弱点をなくしていくことが鍵となります。特定の単元が原因で偏差値が伸び悩んでいるのであれば、教室での勉強だけでなくその単元を優先的に学習し直し、同時に得意分野をさらに伸ばしていくことが効果的です。
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