坪田塾のメロス

皆さんこんにちは!東京 本郷三丁目校講師の河野です。

 

12月に入り体調を崩している生徒さんが多いように感じます。

入試まであと少しなので、体調管理には細心の注意を払ってくださいね!

 

今回のトピックスは「坪田塾のメロス」です。

 

メロスは激怒した。

手には、前回よりも成績の下がった模試の結果が握られている。

必ず倍返にしてやらなければならぬと決意した。

メロスは、坪田塾の大学受験生である。

 

メロスには中学生の妹がいる。この妹は、来年高校受験をすることになっていた。入試日も近いのである。

メロスは、それゆえ、妹のための参考書を買いに、はるばる市にやって来たのだ。

人のために行動するメロスにはファンが多かった。つまり人間力が高いのである。

 

歩いているうちに、まちの様子を怪しく思った。

みんな家で勉強していて、ひっそりとしている。

のんきなメロスも、だんだん不安になってきた。

そこにメロスのファンである親切な老人が教えてくれた。

 

老人「センター試験まで1ヶ月を切り、みんなが苦しんでいます。」

メロス「なぜ残り1ヶ月もないのだ?」

老人「月日が経つのは早いのです。そして大学入試センターが試験日を決めたのです。」

メロス「おどろいた。大学入試センターは乱心か?」

老人「いいえ、乱心ではございませぬ。実は、試験日は1月13日以降の最初の土曜日、日曜日と最初から決められています。」

 

聞いて、メロスは激怒した。「呆れた試験だ。この試験を始めてはならぬ。」

 

メロスは、単純な男であった。妹への参考書を持ったまま、のそのそ大学入試センター事務局に入っていた。
たちまち彼は、巡回の警備員に捕まった。
調べられて、メロスから大学入試センター試験の受験票が出てきたので騒ぎが大きくなってしまった。

 

「この受験票で何をするつもりであったか。言え!」
大学入試センター⻑は静かに、けれども威厳を持って問い詰めた。

 

「受験をするつもりだったが、時間がなさすぎる。センター試験日を延期して受験生を救うのだ。」
とメロスは悪びれずに言った。

 

「お前がか?時間があったところで勉強をしないのではないか?」
センター試験⻑は、憫笑(びんしょう)した。
「わしだって受験生を苦しめたいわけではない。しかし期限を決めて試験をしないとお前たちは勉強しないではないか」

 

メロスは悔しくなった。

 

「私は、ちゃんと勉強する覚悟がある。
1日14時間勉強してみせる。ただーー」

 

と言いかけて、メロスは足元に視線を落とし瞬時ためらい、
「ただ、私に情をかけたいつもりなら、
試験までに3週間の期限を与えてください。
必ず1日14時間勉強して、センター8割を超えて見せます。」

 

「ばかな。そんなに勉強ができるものか」
とセンター試験⻑は低く笑った。

 

「口ではどんなことでも清らかなことでもいえる。口だけで何もせずに3週間経ったとしても、泣いて詫びても聞かぬぞ。」

 

「私は約束を守ります。この市に志望校でA判定を取っているセリヌンティウスという友人がいます。
勉強しなかったら、あの友人のセンター試験の受験資格を剥奪してください。」

 

メロスはその夜、一睡もせず、家に戻り、坪田塾の冬期講習をすべて申し込み、
急ぎに急いで過去問を解いたのは、あくる日の午前、日は高く昇っていた。
そのまま坪田塾の校舎に行き、指導を受けた。

 

8時間の講習後、よろよろと歩き出して、家に帰って、1日の復習を終えると、
間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらい深い眠りに落ちてしまった。
目が覚めたのは、明け方だった。そして、また過去問を解いて、塾に行く。
この生活をずっと続けた。

 

しかし、2週間を過ぎる頃には、精も根も尽きていた。
「もう限界だ。ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。セリヌンティウスよ、ゆるしてくれ。」

 

ふと耳に、女性ボーカルの声が聞こえた。
「弱い日は 暗闇に 飲み込まれそうになるけど 君の声が聴こえる Start Me Up」
(Saku「Start Me Up」)

 

ほうと⻑い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。勉強しよう。
ついに、最後の死力を尽くして、14時間勉強を3週間やり切った。

 

センター試験当日。まだ試験開始時間にならない。
最後の死力を尽して、メロスは走った。
教室のドアがしめ切られようとした時、メロスは疾風の如くセンター試験会場に突入した。

 

「私だ、試験官!メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」

 

周りの受験生は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。
セリヌンティウスは、受験資格を得られたのである。

 

「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。
「私を殴れ。ちからいっぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君がもし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」

 

セリヌンティウスは、すべてを察した様子でうなずき、
センター試験会場いっぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑み、

 

「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの3週間の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」

 

メロスは腕にうなりをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。

 

「ありがとう、友よ。」

 

二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。

 

ひとりの少女が、2Bの鉛筆をメロスに捧げた。
メロスは、まごついた。よき友は、気をきかせて教えてやった。

 

「メロス、君は、タオルしか持っていないじゃないか。早くその鉛筆を持つがいい。この可愛い娘さんは、メロスが回答用紙に何もマークしないまま退場になるのが、たまらなく口惜しいのだ。」

 

勇者は、ひどく赤面した。

 

メロスとセリヌンティウスは、受験勉強を通して、環境のせいにせず、限界まで努力すること、信じること、最後まで諦めないことの大切さを学んだ。